労働現場での事故によって足首を骨折してしまうケースは、決して珍しいものではありません。重い荷物を運搬中の転倒、工事現場での機械との接触、足場からの転落など、一瞬の出来事で重大な怪我につながることがあります。
「いつまで仕事を休むことになるのだろうか」
「治療費はどうなるのだろう」
「収入は補償されるのだろうか」
事故に遭われた方やご家族の多くは、このような不安を抱えながら日々を過ごされています。私はこれまで、労災被害者が労災保険の仕組みや補償の範囲について十分な情報を得られないまま、必要な補償を受け損ねてしまうケースを数多く見てきました。
労災事故における足首の骨折では、症状が安定した後も機能障害や神経障害が残る可能性があり、その場合、労災保険からの補償、会社への損害賠償請求など、法的な対応も必要となってきます。
そこで今回は、足首の骨折事故に遭われた方やそのご家族の方に向けて、適正な補償を受けるために必要な知識を解説していきます。
足首の骨折事故が起きやすい状況とその特徴
労働現場での足首の骨折は、以下のような状況で発生しています。
まず、重い荷物の運搬中の事故です。工場内での作業中に重量物が足に落下したり、バランスを崩して転倒したりすることで骨折に至るケースがあります。
次に、建設現場などでの高所作業中の転落事故です。足場が不安定な状態での作業中に起きやすく、時には重症化することもあります。
また、倉庫現場などでは、作業中のフォークリフトとの接触事故によって足首を骨折するケースも見られます。
足首の骨折における後遺障害認定
足首の骨折の治療を終えた後、「足首が思うように動かない」「痛みが残る」といった症状が続くことがあります。このような後遺障害が認められると、労災保険から補償を受けることができます。
足首の骨折における後遺障害は、大きく分けて「機能障害」、「変形障害」「神経障害」の3種類があります。
機能障害
骨折による治療後、以前のように足首が自由に動かせなくなってしまうケースがあります。これが、「機能障害」です。
・第8級7号:足関節の機能を完全に失った場合(「関節の用を廃したもの」)
足首の関節が強直したもの、関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの
なお、足首の動揺関節の場合は、常に硬性補装具を必要とするもの
・第10級10号:足関節の機能に著しい障害が残った場合
足首の関節の可動域が、健常な関節の可動域の1/2以下に制限されたもの
なお、足首の動揺関節の場合は、時々硬性補装具を必要とするもの
・第12級7号:足関節の機能に障害が残った場合
足首の関節の可動域が、健常な関節の可動域の3/4以下に制限されたもの
なお、足首の動揺関節の場合は、重激な労働などの際以外には硬性補装具を必要としないもの
※足首の動揺関節とは、事故による靭帯の断裂等により、足首の関節がぐらぐらして安定しなくなったり、異常な方向に曲がったりする状態です。
変形障害
骨折した骨は、時間をかけて自然にくっついていきます。この過程を医学的には「骨癒合」と呼びます。しかし、場合によっては正常な形でくっつかず、変形したまま固定されてしまうことがあります。これが「変形障害」です。
・12級8号「長管骨に変形を残すもの」
脛骨の骨端部にゆ合不全を残すもの
神経障害とは
足首の骨折の治療が終了しても、足首に痛みやしびれ等が残る場合、神経障害として、後遺障害と認定される可能性があります。
他覚的(画像所見等)に神経障害の存在が証明できる場合は12級12号、神経障害の存在が医学的に説明可能な場合は14級9号と認定されます。
労災事故による足首の骨折で受けられる補償
労災事故で足首を骨折してしまった場合、適切な手続きを行うことで様々な補償を受けることができます。私の経験では、被災者の方やそのご家族が受けられる補償の全容を把握していないケースが少なくありません。ここでは、どのような補償が受けられるのか、説明していきます。
労災事故による足首の骨折で受けられる補償
労災事故で足首を骨折してしまった場合、適切な手続きを行うことで様々な補償を受けることができます。私の経験では、被災者の方やそのご家族が受けられる補償の全容を把握していないケースが少なくありません。ここでは、どのような補償が受けられるのか、説明していきます。
労災保険からの給付内容
まず、労災保険から受けられる主な給付について説明します。これらは、労災認定を受けることで請求が可能となります。
療養補償給付
療養補償給付は、治療にかかる費用を補償するものです。足首の骨折事故の場合、長期のリハビリテーションが必要となることも多く、この給付は重要です。
休業補償給付
休業補償給付は、働けない期間の収入を補償するものです。給付基礎日額の80%(休業補償給付60%+休業特別支給金20%)が支給されます。足首の骨折事故の場合、手術後の回復期間や機能回復のためのリハビリ期間中の収入を補償する重要な給付となります。
障害補償給付
後遺障害が残った場合には、障害補償給付を受けることができます。先ほど説明した障害等級に応じて、年金または一時金が支給されます。第7級以上の場合は年金として、第8級以下の場合は一時金として支給されるのが特徴です。
使用者に対する損害賠償請求
労災保険による補償に加えて、事故の原因に会社側の責任が認められる場合には、使用者に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
例えば、安全対策が不十分な状態で作業をさせていた場合や、必要な研修・指導を怠っていた場合などは、会社側の安全配慮義務違反として損害賠償請求の対象となりえます。この場合、労災保険では補償されない慰謝料や、休業損害の不足分などを請求することができます。
不安を抱え込まずに専門家に相談を
足首の骨折事故は、被災者の方の人生に大きな影響を与えかねない深刻な事故です。適切な補償を受け、円滑な職場復帰を実現するためにも、一人で悩みを抱え込まず、専門家に相談することをお勧めします。
私たち弁護士法人ふくい総合法律事務所では、労災事故の被害に遭われた方々のご相談を無料でお受けしています。
少しでも不安や疑問がありましたら、まずはお気軽にご相談ください。