0776-28-2824 受付時間 9:30~20:00(土日祝対応)

0776-28-2824

受付時間 9:30~20:00(土日祝対応)

メール相談 LINE相談 受給判定
労働災害における遷延性意識障害~適正な補償を受けるために~

事務所概要・アクセス

弁護士法人ふくい総合法律事務所 〒910-0005
福井県福井市大手3丁目14番10号 TMY大名町ビル5階
0776-28-2824 受付時間 9:30~20:00(土日祝対応)

私は弁護士として10年以上、労働災害に関する案件を数多く担当してきました。その中でも、遷延性意識障害の事案は、被害者とそのご家族にとって特に大きな影響を及ぼすケースといえます。

労災事故により、突然、大切な家族が意識を取り戻せない状態になってしまう。医師からは「遷延性意識障害」という言葉を告げられたものの、今後の治療や介護、補償についてどうすればよいのかわからない。このような不安や戸惑いを抱えている方は少なくありません。

私たちの事務所には、「労災事故で家族が意識を失ったまま戻らない」「補償の手続きの進め方がわからない」「今後の介護をどうすればよいか」といった相談が寄せられています。

この記事では、遷延性意識障害とはどのような状態なのか、どのような補償を受けることができるのかについて、解説していきます。遷延性意識障害で悩まれているご家族の方々にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

遷延性意識障害とは

遷延性意識障害は、頭部への重大な損傷により発生する重度の意識障害です。「遷延性」という言葉には「長く続く」という意味があり、意識障害が継続する状態を指します。この状態は、一般的に「植物状態」とも呼ばれています。

遷延性意識障害では、大脳や小脳の広範な領域が損傷を受けることで意識の機能が失われますが、呼吸や心拍などの生命維持機能を司る脳幹の機能は維持されているため、生命活動は続いている状態にあります。

遷延性意識障害と診断されるためには、以下のような症状が3ヶ月以上継続していることが必要です。

・自力での移動や食事ができず、排せつも自力では困難な状態が続く。
・言葉を発することはあっても意味のある会話はできない状態。
・「目を開けて」などの簡単な指示にかろうじて反応することはありますが、それ以上の意思疎通は困難。
・目で物を追うことはできても、それを認識することはできない。

このような症状から、遷延性意識障害の方には24時間体制の介護が必要となります。具体的には、定期的な体位変換による褥瘡の予防、痰の吸引、経管栄養による食事介助、清拭による身体の清潔保持など、専門的な医療的ケアを含む継続的な介護が求められます。

一方、遷延性意識障害は「脳死」とは異なる状態です。脳死では脳全体の機能が失われ、呼吸なども人工的な補助なしには維持できませんが、遷延性意識障害では生命維持に必要な脳幹の機能は保たれているため、自発呼吸が可能です。また、まれではありますが、意識を回復するケースもあることが報告されています。

後遺障害認定について

遷延性意識障害は、労災における最も重い後遺障害として認定されます。具体的には、「神経系統の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」として、第1級の後遺障害に該当します。

後遺障害の認定申請には、医師による診断書が必要となります。診断書では、遷延性意識障害の症状が3ヶ月以上継続していることや、意識障害の程度などを記載してもらうことになります。

また、遷延性意識障害の場合、被害者本人が意思表示をすることができないため、後遺障害認定の申請手続きは家族が行うことになります。ただし、被害者が成人の場合、法的な手続きを行うためには成年後見人の選任が必要となることがあります。

労災事故による遷延性意識障害で受けられる補償

労災事故で遷延性意識障害となった場合、適切な手続きを行うことで様々な補償を受けることができます。私の経験では、被災者の方やそのご家族が受けられる補償の全容を把握していないケースが少なくありません。ここでは、どのような補償が受けられるのか、説明していきます。

労災保険からの給付内容

まず、労災保険から受けられる主な給付について説明します。これらは、労災認定を受けることで請求が可能となります。

療養補償給付

療養補償給付は、治療にかかる費用を補償するものです。遷延性意識障害の場合、治療費が高額となることも多く、この給付は重要な意味を持ちます。

休業補償給付

休業補償給付は、働けない期間の収入を補償するものです。給付基礎日額の80%(休業補償給付60%+休業特別支給金20%)が支給されます。

障害補償給付

後遺障害が残った場合には、障害補償給付を受けることができます。障害等級に応じて、年金または一時金が支給されます。第7級以上の場合は年金として、第8級以下の場合は一時金として支給されるのが特徴です。

介護補償給付

遷延性意識障害により常時介護が必要と認められる場合には、介護補償給付を受けることができます。

使用者に対する損害賠償請求

労災保険による補償に加えて、事故の原因に会社側の責任が認められる場合には、使用者に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

例えば、安全対策が不十分な状態で作業をさせていた場合や、必要な研修・指導を怠っていた場合などは、会社側の安全配慮義務違反として損害賠償請求の対象となりえます。

この場合、労災保険では補償されない慰謝料や、休業損害・逸失利益・介護費用の不足分などを請求することができます。

また、遷延性意識障害という重度の後遺障害の場合、被害者家族の固有の慰謝料を請求することも検討しなければなりません。

まとめ:適切な補償を受けるために

遷延性意識障害の補償問題において、最も大切なのは、被害者とそのご家族の生活を守ることです。そのためには、適切な補償を確実に受けることが重要となります。

被害者とそのご家族の方々が、少しでも安心して治療・介護に専念できるよう、私たち弁護士が全力でサポートさせていただきます。一人で悩まず、まずはご相談ください。