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労働災害における醜状障害(傷あと)~適正な補償を受けるために~

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労災事故に遭い、怪我の治療は終わったものの、傷あとが残ってしまった。

事故の傷あとが残ることで、仕事や人間関係に不安を感じる方は少なくありません。特に顔や首など、人目につきやすい部分に傷あとが残った場合、その心理的負担は大きなものとなります。

このような状況において、労災保険では「醜状障害」という後遺障害の区分が設けられており、補償を受けられる可能性があります。しかし、どのような場合に補償の対象となるのか、どの程度の補償が受けられるのかなど、具体的な内容についてはあまり知られていないのが実情です。

そこで今回は、労災事故により傷あとが残ってしまった方に向けて、適正な補償を受けるために必要な知識を解説していきます。

醜状障害とは?

労災における醜状障害とは、事故によって負った傷あとややけどの跡が治療後も残ってしまった状態を指します。具体的には、瘢痕(はんこん)、線状痕、組織陥没などの形で傷あとが残る場合が該当します。

醜状障害の補償については、かつては「女性にとって体の傷あとが与える影響は大きい」という考えから、男女で異なる等級が設定されていました。しかし、現在では醜状障害による影響は性別に関係なく同様にあると考えられており、男女の区別なく同じ等級で認定されるようになっています。

補償の程度を決める上で最も重要となるのが、醜状が残った部位です。特に、日常生活において露出する部分であるかどうかが大きなポイントとなります。例えば、頭部、顔面部、首といった人目につく部位は、他の部分と比べてより手厚い補償が定められています。

外貌の醜状障害と等級

外貌の醜状障害は、頭部、顔面部、首の部分に生じた傷あとについて定められています。

外貌の醜状障害は、その程度によって第7級、第9級、第12級の3つの等級に分類されます。

最も重い第7級は「外貌に著しい醜状を残すもの」とされ、具体的には以下のような場合が該当します。例えば頭部では、手のひら大以上(指の部分を除く)の瘢痕が残った場合や、頭蓋骨に手のひら大以上の欠損がある場合です。顔面部では、鶏卵面大以上の瘢痕や、10円硬貨大以上の組織陥没がある場合が該当します。また首の場合は、手のひら大以上の瘢痕が残った場合が第7級として認定されます。

第9級は「外貌に相当程度の醜状を残すもの」として、顔面部に長さ5センチメートル以上の線状痕が残った場合に認定されます。

第12級は「外貌に醜状を残すもの」として、頭部であれば鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨に鶏卵大面以上の欠損、顔面部では10円硬貨大以上の瘢痕や長さ3センチメートル以上の線状痕、首では鶏卵大面以上の瘢痕が残った場合などが、この等級として認定されます。

実際の認定にあたっては、これらの大きさや程度に加えて、「人目につく程度以上のもの」であることが重要な要件となります。例えば、瘢痕があっても髪の毛や眉毛で普段隠れている場合は、醜状障害としては認定されません。

このように外貌の醜状障害は、その部位や大きさ、程度によって細かく等級が定められています。正しい補償を受けるためには、医師による診断と記録が重要となります。

上肢・下肢の露出面と他の部位の醜状障害

外貌以外の部位における醜状障害は、「露出面」とそれ以外の部位で区分されています。特に上肢・下肢については、日常生活での露出頻度を考慮した基準が設けられています。

上肢・下肢の露出面

上肢の露出面とは肘関節から先(手を含む)の部分を指し、下肢の露出面とは膝関節から先(足を含む)の部分を指します。これらの部位に手のひら大(指の部分を除く)の醜い傷あとが残った場合、第14級として認定されます。さらに、両上肢または両下肢について、露出面の2分の1程度以上の醜状を残す場合には、第12級として認定されます。

この基準は、自賠責保険の後遺障害認定とは異なる点にご注意ください。自賠責保険では上腕部や大腿部も露出面として扱われますが、労災保険ではこれらの部位は露出面には含まれません。そのため、同じ事故でも保険の種類によって認定が異なることがあります。

露出面以外の部位

露出面以外の部位については、醜状の範囲によって等級が定められています。例えば、両上腕または両大腿のほとんど全域、あるいは胸部・腹部の各々の全域、または背部・臀部の全面積の2分の1程度を超える醜状が残った場合は、第12級として認定されます。

また、上腕または大腿のほとんど全域、胸部・腹部のそれぞれ各部の2分の1程度、背部・臀部の全面積の4分の1程度を超える醜状が残った場合は、第14級として認定されます。

醜状障害における逸失利益

醜状障害の補償を考える上で重要となるのが「逸失利益」の問題です。逸失利益とは、後遺障害によって労働能力が低下し、将来得られたはずの収入が減少することによる損害を指します。

しかし、醜状障害の場合、手足の機能が失われるわけではないため、一見すると労働能力への影響は少ないように思われます。そのため、逸失利益が認められるかどうかが、会社に対する損害賠償請求の場面において、しばしば争点となります。

ただし、実際の裁判例を見ると、醜状障害による逸失利益が認められるケースは少なくありません。例えば、顔面部に大きな傷あとが残ったある事例では、接客や営業などの対人業務に支障が生じる可能性が認められ、将来の昇進や転職にも影響があるとして、逸失利益が認定されました。

裁判所は、以下のような要素を総合的に考慮して判断を行っています。

・醜状の部位、内容、程度
・被害者の職業(現在の仕事内容や将来の転職可能性)
・対人関係への影響
・年齢や性別などの個人的要素

また、逸失利益が認められない、あるいは低額と判断される場合でも、精神的損害として慰謝料が増額されるケースがあります。これは、他者との関係が消極的になってしまうなど、収入面では評価しきれない影響を考慮したものです。

実際の補償金額は事案によって大きく異なりますが、醜状障害が労働能力に与える影響を具体的に説明し、立証できることが重要です。そのためには、医師の診断書はもちろん、仕事への影響を示す資料や証言なども必要となってきます。

まとめ:適切な補償を受けるために

これまで述べてきたとおり、労災における醜状障害の補償は、傷あとの部位や程度によって細かく基準が定められ、醜状障害の補償には逸失利益など様々な考慮すべき要素があります。

ご自身の状況について不安や疑問がありましたら、労災に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。専門家のアドバイスを得ることで、適切な補償を受けられる可能性が高まります。 私たち弁護士法人ふくい総合法律事務所では、労災事故の被害に関する相談を無料で承っております。まずはお気軽にご相談ください。