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うつ病など精神疾患の方へ(労災申請の条件と申請手続)
小前田宙
私たちは、事務所として1つのチームになって、依頼者のお話をじっくりお聞きし、的確かつ迅速なリーガルサービスの提供を果たしていきたいと考えております。 依頼者に「ふくい総合法律事務所に来てよかった」、「何かあったらまた相談したい」と言われることを目指しています。

昨今、仕事によるストレスが原因でうつ病などの精神疾患を発症するケースが増えています

実際、厚生労働省の統計によれば、精神疾患に関する労災申請件数は年々増加しています。しかし、その一方で労災認定される割合は横ばいで、申請者の約30%程度に留まっているのが現状です。つまり、精神疾患による労災認定は「狭き門」といえるでしょう。

なぜ、精神疾患の労災認定は難しいのでしょうか。その理由は、精神疾患の特徴にあります。うつ病をはじめとする精神疾患は、その発症に様々な要因が複雑に絡み合っていることが多く、仕事が原因であることを客観的に証明するのが容易ではないのです。

しかし、適切な準備と対応を行えば、労災認定を受けられる可能性は十分にあります。

この記事では、精神疾患の労災認定を受けるための条件や申請手順について、解説していきます。特に、認定基準の考え方や、申請の際の注意点など、実践的な情報をお伝えしていきますので、労災申請をお考えの方は、ぜひ参考にしていただければと思います。

精神疾患の労災認定の3つの要件

精神疾患による労災申請において、最も重要なのは労働基準監督署による認定を受けることです。この認定を受けるためには、厚生労働省が定める3つの要件をすべて満たす必要があります。ここからは、それぞれの要件について詳しく見ていきましょう。

1つ目の要件:認定基準の対象となる精神障害を発病していること

まず重要なのは、医師による正式な診断を受けていることです。

認定基準の対象となる精神障害の種類には、うつ病、適応障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などがあります。

ただし、注意していただきたいのは、単なる「疲れ」や「ストレス」という状態では認定の対象とはならないということです。必ず医療機関を受診し、医師による診断を受けることが大切です。

2つ目の要件:業務による強い心理的負荷が認められること

次に必要なのが、発病前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が存在したことです。実務上、この「強い心理的負荷」の証明が最も重要なポイントとなります。

厚生労働省は「心理的負荷」について「評価表」を設けており、負荷の種類ごとに通常どの程度の「心理的負荷」を受けるであろうという目安を定めています。

まず、業務の中で過失によって他人を死亡又は重大な怪我をさせてしまった、意思を抑圧されて強姦・猥褻行為を受けた、発病直前の1ヶ月に160時間以上の時間外労働を行ったなど、特に強い心理的負荷を伴うのが当然といえる出来事があった場合、原則として「強い」心理的負荷があったと認められます。

また、職場で悲惨な事故があった、(慣習として行われることがあっても)本来は違法な行為を強要された、達成困難なノルマを課された・ノルマを達成できなかった、顧客・取引先から無理な注文を受けた、といった場合には、それだけで必ず「強い」心理的負荷と評価されるわけではありません。それぞれの出来事についての具体的な事情や、各事情が関連する程度を考慮した上で、「強い」心理的負荷といえるかが判断されます。

なお、最近話題になることが多い長時間労働がある場合は、上記の「発病直前の1ヶ月間に160時間以上の時間外労働を行った場合」以外にも、

  • 発病直前の3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
  • 発病直前の2ヶ月間連続して1月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
  • 発病直前の3ヶ月間連続して1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行った場合
  • 転勤して新たな業務に従事し、その後月100時間程度の時間外労働を行った場合

などが「業務による強い精神的負担」として例示されています。

3つ目の要件:業務以外の要因による発病ではないこと

最後の条件は、精神疾患の発症が業務以外の要因によるものではないことです。例えば、家庭内の問題や私生活でのストレスが主な原因である場合には、労災として認定されません。

ただし、これは業務以外に全くストレス要因がないということを求めているわけではありません。重要なのは、業務による心理的負荷が主たる要因であると認められることです。

たとえば、業務とは無関係に配偶者と離婚した、流産してしまった、家族が死亡・重い怪我を負った、犯罪に巻き込まれたなど、それだけで強い心理的負荷を受けるであろう出来事があった場合、「業務以外の心理的負荷」によって発病したと評価されやすくなります。

また、もともと精神疾患を患っていた、アルコール依存症であったなど、もともと精神疾患を発症しやすい方については、それが原因での発症でないかについて慎重な判断がなされます。

とはいえ、私生活が順風満帆という状況でなかったとしても、あくまで主原因は業務上受けた心理的負荷であるとして、労災と認定される可能性もあります。

他にも原因が考えられるからといって簡単に諦めないようにしてください。

労災認定における重視される事情

実際の労災認定において、労働基準監督署はどのような基準で判断を行うのでしょうか。特に、上記で述べた2つ目の要件「業務による強い心理的負荷が認められること」において、重視される事情を解説していきます。

特別な出来事による心理的負荷

労災認定において最もわかりやすいのが、「特別な出来事」による心理的負荷のケースです。例えば、発病直前の1ヶ月に約160時間を超える時間外労働が認められる場合や、極度の精神的負荷を伴う事故・事件を体験した場合などが、これに該当します。

このような特別な出来事が認められる場合、基本的に心理的負荷は「強」と判断され、他の条件も満たしていれば、労災認定される可能性が高くなります。

長時間労働と心理的負荷の評価

特別な出来事に該当しない場合でも、継続的な長時間労働は重要な判断材料となります。例えば、以下のようなケースでは、心理的負荷が「強」と評価される可能性があります。
・発病前2ヶ月間にわたって、月120時間以上の時間外労働が続いていた場合
・発病前3ヶ月間にわたって、月100時間以上の時間外労働が続いていた場合
・部署異動や業務内容の大きな変更と共に、月100時間程度の時間外労働が発生した場合

ただし、ここで注意していただきたいのは、労働時間の立証の問題です。タイムカードの記録だけでなく、パソコンのログ記録やメールの送受信履歴、業務日報なども、労働時間を証明する重要な証拠となります。

パワハラ・セクハラケースの評価

近年特に増加しているのが、職場でのハラスメントが原因で精神疾患を発症するケースです。例えば、以下のような行為が認められる場合、心理的負荷が「強」と評価される可能性があります。
・治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合
・暴行等の身体的攻撃を執拗に受けた場合
・胸や腰などへの身体接触を含むセクハラが継続して行われた
・執拗な暴言や人格否定的な言動を繰り返し受けた
・相当な長時間にわたって繰り返し威圧的な叱責を受けた
・退職の意思がないにもかかわらず、執拗に退職を強要された

ただし、ハラスメントの案件で特に難しいのが、客観的な証拠の収集です。可能な限り、ハラスメントを受けた際の記録(日時、場所、内容、証人など)を残しておくことが重要です。また、会社に相談した記録や、産業医との面談記録なども、有効な証拠となり得ます。

労災申請の具体的な手順と注意点

ここからは、実際の労災申請の手順について、それぞれの段階で注意すべきポイントと共に解説していきます。

医療機関の受診と継続的な通院

労災申請の第一歩は、必ず医療機関を受診することです。精神疾患の症状を感じたら、できるだけ早期に精神科や心療内科を受診しましょう。

私がお伝えしたいのは、通院は必ず継続していただきたいということです。ともすれば「症状が少し良くなったから」と通院を中断してしまう方もいらっしゃいますが、これは労災申請の観点からも望ましくありません。なぜなら、継続的な通院記録は、症状の経過を示す重要な証拠となるからです。

申請書類の準備と提出

労災申請には、主に以下の書類が必要となります。
・労災保険給付請求書
・医師の意見書(診断書)
・申立書(業務に関する具体的な出来事等を記載する書面)

特に重要なのが、申立書です。この申立書には、いつ、どのような業務上の出来事があり、それによってどのような心理的負荷を受けたのかを、できるだけ具体的に記載する必要があります。

ここで多くの方が悩まれるのが、会社の証明が得られない場合です。しかし、会社の証明が得られなくても申請自体は可能です。その場合は、タイムカードの写しやメールの履歴など、客観的な記録を可能な限り集めることが重要になってきます。

労働基準監督署による調査への対応

申請書類を提出すると、労働基準監督署による調査が始まります。この調査では、申請者本人だけでなく、会社や同僚、主治医などへの聴き取り調査が行われます。

調査の過程で追加の資料提出を求められることもあります。また、申請者本人への聴き取り調査では、業務の状況や発症に至る経緯について、詳しい説明を求められます。

ここで重要なのは、感情的になることなく、客観的な事実を丁寧に説明することです。例えば「上司が厳しかった」という抽象的な表現ではなく、「いつ、どこで、どのような言動があったか」という具体的な事実を説明することが大切です。

認定までの期間と準備すべきこと

労災認定までには、申請から通常6ヶ月以上の期間を要します。中には1年以上かかるケースもあります。この期間をどう乗り切るかも重要な課題です。

治療費や休業補償は、労災認定後に遡って支給されますが、認定までの期間の生活をどう維持するかは、事前に検討しておく必要があります。例えば、傷病手当金の受給を検討したりすることも選択肢として考えられます。

最後に

ここまで、精神疾患の労災認定について詳しく解説してきました。

精神疾患の労災認定は確かに「狭き門」です。しかし、それは決して「不可能」というわけではありません。重要なのは、適切な準備と対応です。発症したらまず医療機関を受診し、業務との関連を示す証拠を丁寧に集め、必要な手続きを正確に行うことで、労災認定を受けられる可能性は十分にあります。

精神疾患でお悩みの方、労災申請をお考えの方は、一人で抱え込まず、まずは弁護士にご相談ください。