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食品製造業(製造・加工)における労災事故について
小前田宙
私たちは、事務所として1つのチームになって、依頼者のお話をじっくりお聞きし、的確かつ迅速なリーガルサービスの提供を果たしていきたいと考えております。 依頼者に「ふくい総合法律事務所に来てよかった」、「何かあったらまた相談したい」と言われることを目指しています。

食品製造業(製造・加工)における労災事故について

食品製造業で働く方で毎日の作業の中で「もしも事故が起きたらどうしよう」と不安に感じたことはありませんか。

食品加工工場では、高速で動く機械や滑りやすい床、刃物や薬品の取り扱いなど、常に危険と隣り合わせの環境で作業が行われています。実際に、機械への巻き込まれ事故や転倒事故、薬品による火傷など、様々な労災事故が日常的に発生しているのが現実です。

この記事では、食品製造業で働く皆さんに向けて、労災事故の実態から労災保険の詳しい内容、さらには会社への損害賠償請求まで、万が一の事故に備えて知っておくべき重要な情報をお伝えします。正しい知識を身につけることで、もしもの時に適切な補償を受け、安心して生活を再建していただきたいと心から願っています。

1 食品製造業で起こりやすい労災事故とそのリスク

食品加工工場は、多様な機械設備や化学物質を扱う環境であるため、様々な労災事故が発生しやすい職場といえます。労働安全衛生法に基づくリスクアセスメントの観点から見ると、食品製造業では特に注意すべき事故パターンがあります。

最も多いのが機械による事故です。食品を切断する機械や包装機械に手や衣服が巻き込まれてしまう事故は、食品加工工場では珍しいことではありません。高速で動く機械に一瞬の油断で触れてしまい、指を切断してしまったり、腕に重傷を負ってしまったりするケースが後を絶ちません。

また、食品工場では衛生管理のために頻繁に床を洗浄するため、床が滑りやすくなっています。この環境が原因で転倒事故が多発しており、腰椎圧迫骨折や頭部外傷といった重篤な怪我につながることもあります。

さらに、冷凍食品工場では極低温環境での作業、惣菜工場では高温の油を扱う作業など、温度による事故も頻繁に発生しています。凍傷や火傷は、適切な治療を受けなければ後遺障害が残る可能性もある深刻な怪我です。

食品添加物や洗浄剤などの化学薬品を扱う際の事故も見逃せません。薬品が目に入って視力障害を起こしたり、皮膚に付着して化学火傷を負ったりする事例もあります。

事故の中でも深刻なのが、高所からの墜落事故や大型機械による圧迫事故です。こうした重大事故は、死亡に至るケースもあれば、脊髄損傷による下半身麻痺や四肢の切断といった、生活に大きな支障をきたす後遺障害が残る場合もあります。

事故後のトラウマや精神的ストレスも軽視できません。重大な事故を経験した労働者は、職場復帰への不安や将来への絶望感を抱くことも多く、長期的なメンタルヘルスのケアが必要になる場合もあります。

このような事故を防ぐためには、企業が労働基準法に定められた安全配慮義務を徹底することが不可欠です。しかし、残念ながらすべての企業が十分な安全対策を講じているとは言えないのが現実です。

2 労災事故後にすべき適切な対応

次に、労働者が労災事故後にすべき対応について説明をしていきます。

適切な治療を受けること・労災申請をすること

食品製造業で労災事故に遭ってしまった場合、まず最優先すべきは適切な治療を受けることです。労災事故による治療費は、労災保険から全額支給されまので、治療費の心配をすることなく、回復に専念することができます。

事故後の対応として次に重要なのが、労災保険の申請手続きです。労災保険からは、治療費の全額負担に加えて、休業中の補償や後遺障害が残った場合の補償など、様々な給付を受けることができます。

労災保険の給付内容

労災保険からは、主に以下のような給付を受けることができます。

まず、「療養補償給付」により、治療費が全額カバーされます。入院費用や通院費用、薬代なども含まれます。

次に、「休業補償給付」があります。これは、労災による休業4日目から支給され、給料の約8割が補償されます。この制度により、治療に専念しながらも生活の維持が可能となります。

そして、後遺障害が残った場合には「障害補償給付」を受けることができます。この給付は、障害の程度によって1級から14級までの等級に分類され、等級に応じて年金または一時金が支給されます。

後遺障害の等級認定について

この障害等級の認定は、将来の補償額に大きく影響する重要な手続きです。例えば、機械による「はさまれ・巻き込まれ」事故で手指を負傷した場合、その障害の程度や状態によって等級が決定されます。適切な等級認定を受けるためには、医師による診断書の記載内容が重要となり、場合によっては専門家のサポートが必要となることもあります。

私の経験上、労災保険の手続きで最も注意が必要なのは、この後遺障害等級の認定です。一度認定された等級を変更することは難しいため、後遺障害が残る可能性がある場合には、早い段階から専門家の適切なサポートを受けることをお勧めしています。

3 見落としがちな損害賠償請求の重要性

食品製造業における労災事故について、会社に対して、損害賠償請求をすることができる可能性もあります。

労災保険だけでは、損害を十分に填補できないこと

食品製造業での労災事故の場合、労災保険の給付だけで満足してしまい会社に対する損賠賠償請求を見過ごしがちですが、労災保険だけでは、事故による精神的苦痛に対する慰謝料や、後遺障害による将来の収入の減少を完全にカバーすることはできません。

会社に安全配慮義務違反があれば損害賠償請求が可能なこと

では、どのような場合に会社に対して損害賠償請求ができるのでしょうか。

食品製造業における労災事故で、会社が安全対策を怠っていた場合、それは「安全配慮義務違反」として損害賠償請求の対象となります。安全配慮義務とは、従業員の生命や健康を危険から保護するよう配慮する会社の義務です。

例えば、食品加工機械に必要な安全装置が設置されていなかったケースにおいて、作業員の方が機械に手を巻き込まれ指を切断する重傷を負い、この事故は適切な安全装置があれば防ぐことができたとします。

このような場合、会社には安全配慮義務違反があったと認められる可能性があります。

損害賠償請求で認められる損害項目

労災保険とは別に、以下のような損害の賠償を求めることができます。

・後遺障害による将来の収入減少分
・後遺障害による精神的苦痛に対する慰謝料
・事故による精神的苦痛に対する慰謝料
・通院に要した交通費
・付添看護を必要とした場合の費用
・後遺障害に伴う将来の介護費用

私の経験では、労災保険の給付額と比較して、損害賠償請求により受け取れる金額が数倍になるケースも珍しくありません。

特に重度の後遺障害が残ってしまった場合、将来の生活設計を考えると、適切な損害賠償を受けることは非常に重要です。

ただし、損害賠償請求には専門的な知識と経験が必要となり、また会社との交渉も必要となります。場合によっては訴訟も視野に入れなければなりません。そのため、労災事故に遭われた場合は、早い段階で労災事件に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

まとめ

食品製造業で働く皆さんにとって、労災事故は決して他人事ではありません。機械への巻き込まれや転倒、薬品による火傷など、様々な事故のリスクが日常的に存在しています。

万が一事故に遭った場合、まず重要なのは迅速な労災申請です。療養給付、休業給付、障害給付など、労災保険の各種給付を適切に受けることで、治療費の心配なく回復に専念することができます。企業が非協力的であっても、労働者には申請する権利があることを忘れないでください。

しかし、労災保険だけでは十分な補償を受けられない場合が多いのも事実です。特に後遺障害が残った場合や精神的な苦痛を受けた場合には、企業への損害賠償請求を検討することが重要になります。

当事務所では、労災事故の被害に遭われた方のご相談を数多く承ってきました。労災事故に遭われた直後は、怪我の痛みや仕事への影響、今後の生活への不安など、様々な心配事が重なることと思います。

そのような時こそ、一人で悩まず、専門家に相談することをお勧めします。

労災事故に遭われて、これからどうすればよいのかお悩みの場合は、ぜひ当事務所にご相談ください。