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アスベスト(石綿)健康被害を受けた方へ

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アスベスト(石綿)健康被害を受けた方へ|給付金申請と損害賠償請求の流れを弁護士が解説

アスベスト(石綿)を扱う仕事に長年従事してきた方が、ある日突然、息苦しさを感じたり、健康診断で異常を指摘されたりすることがあります。

病院で検査を受けた結果、石綿肺や肺がん、中皮腫といったアスベスト関連の病気だと診断されたとき、多くの方は大きな不安に襲われます。

アスベストによる健康被害は、仕事をしていた時期から何十年も経過してから発症することが多く、ご本人もご家族も突然の出来事に戸惑われるケースがほとんどです。

しかし、アスベストによる健康被害を受けた方には、労災保険をはじめ、国や会社に対する損害賠償請求、各種給付金制度など、複数の補償や救済の仕組みが用意されています。

ただし、これらの制度は複雑で、どの手続きをどの順番で進めればよいのか、一般の方にはわかりにくいのが実情です。

今回の記事では、アスベスト健康被害を受けた方やそのご遺族が、どのような順序で手続きを進めていけば適切な補償を受けられるのか、詳しく解説していきます。

第1章:アスベスト健康被害とは何か

アスベスト(石綿)は、天然に産出される鉱物繊維です。熱に強く、丈夫で変化しにくいという優れた特性を持っていたため、かつては建材をはじめとする様々な製品に広く使用されていました。工場での製造作業や建設現場での作業など、多くの労働者がアスベストを扱う仕事に従事してきた歴史があります。

しかし、アスベストは人の髪の毛よりもはるかに細い繊維でできており、空気中に飛散すると人が吸い込んでしまいます。吸い込まれたアスベスト繊維は肺の奥深くまで入り込み、そこに長期間滞留します。アスベストは丈夫で変化しにくい性質があるため、一度体内に入ると排出されにくく、肺の組織に深刻なダメージを与えていくのです。

アスベストが引き起こす主な病気としては、石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水などがあります。

アスベスト健康被害の最も大きな特徴は、長い潜伏期間です。アスベストを吸い込んでから病気が発症するまでに、20年から50年という非常に長い年月がかかることが少なくありません。若い頃に工場や建設現場で働いていた方が、定年退職後に突然病気が見つかるというケースも珍しくないのです。

現在では、アスベストの危険性が広く認識され、新たなアスベスト製品の製造や使用は禁止されています。しかし、過去にアスベストを扱っていた方々の健康被害は今もなお続いており、これからも新たに発症する方が出てくると予想されています。

第2章:最初に行うべき3つの申請手続き

アスベスト関連の病気だと診断された場合、まず検討すべきなのが、健康管理手帳の交付、労災申請、救済給付という3つの手続きです。これらは国や会社への損害賠償請求や給付金申請の前提となる重要な手続きであり、この段階でしっかりと認定を受けておくことが、その後の手続きをスムーズに進めるための鍵となります。

健康管理手帳(じん肺)の交付について

アスベストを扱う業務に従事していた労働者が石綿肺にかかった場合、じん肺の健康管理手帳の交付を受けられる可能性があります。

健康管理手帳の交付を受けると、指定された医療機関で年に1回、無料で健康診断を受けることができるようになります。定期的に健康状態をチェックできるため、病気の進行を早期に把握できるメリットがあります。

健康管理手帳の交付を受けるためには、まずじん肺健康診断を受診する必要があります。その結果に基づいてじん肺管理区分の申請を行い、管理2または管理3と認定されると、健康管理手帳の交付を受けることができます。

ただし、注意すべき点があります。健康管理手帳の申請ができるのは労働者に限られており、一人親方などの自営業者は申請できません。また、じん肺管理区分の決定は、じん肺症全般についての認定であり、石綿肺であることを直接証明するものではありません。

後ほど説明する国家賠償請求や建設アスベスト給付金の対象となるのは、管理2または管理3、管理4の石綿肺です。そのため、石綿肺にかかり、これらの請求や申請を考えている場合は、じん肺健康診断を受診してじん肺管理区分の申請をしておくことが非常に重要となります。

労災申請の手続き

アスベストを取り扱う業務を行い、それによって石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水、中皮腫、肺がんにかかった方やそのご遺族は、労災申請をすることができます。

労災申請をすると、労働基準監督署がアスベスト関連疾患にかかっているかどうか、業務上アスベストにばく露したのかどうかを調査します。労災が認定されれば、治療費が補償される療養補償給付や、治療のために仕事を休んでいる間の収入を補う休業補償給付を受けることができます。また、被災者が亡くなった場合には、ご遺族に遺族補償給付が支払われます。

石綿肺で労災申請をする場合には、原則として事前にじん肺管理区分の決定を受ける必要があるとされています。ただし、労働基準監督署によって運用が異なる可能性があるため、石綿肺で労災申請を考えている方は、管理区分の決定を受けておく必要があるかどうか、所轄の労働基準監督署に事前に確認しておくとよいでしょう。

労災申請ができるのは、労働者または労災保険に特別加入している場合に限られます。労災保険に特別加入していない自営業者などは、労災申請ではなく、次に説明する救済給付の申請を検討することになります。

なお、遺族補償給付は被災労働者の死亡から5年で時効となります。しかし、仕事中にアスベストにばく露してアスベスト関連疾患にかかった方のご遺族については、遺族補償給付が時効で請求できなくなった場合でも、特別遺族給付金を請求することができます。特別遺族給付金の請求期限は現在、令和14年3月27日までとなっていますので、該当する方は早めに申請を検討してください。

救済給付の申請について

救済給付は、アスベストにばく露し、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水、中皮腫、肺がんといったアスベスト関連疾患にかかり、労災保険を利用することができない方に対して、医療費などが支給される制度です。

救済給付の特徴は、アスベストにばく露したのが業務上であるか否かを問わない点です。たとえば、アスベストを扱う工場の近隣に住んでいてアスベストを吸い込んでしまった方や、アスベストを扱う工場で働いていた人の作業着を洗濯していてアスベストにばく露した方、労災保険の対象とならない一人親方なども、救済給付の対象となる可能性があります。

救済給付の申請をすると、アスベスト関連疾患にかかっているかどうかが調査されます。認定されれば、医療費の自己負担分や、療養手当として月額約10万円が支給されます。

これらの手続きを先に行う重要性

労災や救済給付が認定されると、アスベストを取り扱う業務に従事してアスベストにばく露し、一定のアスベスト関連疾患にかかったことの裏付けとなります。また、じん肺管理区分の認定を受けていると、管理2以上のじん肺症にかかったことの証明になります。

これらの認定は、後ほど説明する国家賠償請求や建設アスベスト給付金の申請、会社に対する損害賠償請求を行う際に、非常に重要な証拠となります。そのため、国や会社への損害賠償請求などは、労災などの認定を受けてから行うのが通常の流れです。

ただし、労災などが認定されなかった場合でも、その理由次第では国家賠償請求や建設アスベスト給付金の申請、会社に対する損害賠償請求が可能な場合もあります。認定されなかったからといって諦めるのではなく、一度弁護士に相談してみることをお勧めします。

第3章:国への損害賠償請求と給付金申請

労災や救済給付などの認定を受けた後、条件を満たす方は、国に対する損害賠償請求や給付金の申請を検討することになります。アスベスト工場や建設現場で働いていた方には、労災保険に加えて、国から最大1300万円の賠償金や給付金を受け取れる可能性があります。

工場型アスベスト訴訟(国家賠償請求)について

昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべきアスベスト工場内で、アスベスト粉じんにばく露する作業に従事し、それによって一定のアスベスト関連疾患にかかった方またはそのご遺族は、国に対して損害賠償請求をすることができます。

この制度は、大阪泉南アスベスト訴訟という裁判で、国がアスベストの危険性を認識しながら適切な規制をしなかったことが違法だと判断されたことに基づいています。最高裁判所の判決を受けて、国は一定の要件を満たす方と訴訟の中で和解をし、損害賠償金を支払う方針を示しています。

国家賠償請求を行うためには、損害賠償請求権の期間内に訴訟を提起し、上記の期間に局所排気装置を設置すべきアスベスト工場内で、アスベスト粉じんにばく露する作業に従事した結果、一定のアスベスト関連疾患にかかったことを証拠で示す必要があります。

一定のアスベスト関連疾患にかかったことについては、じん肺管理区分の決定や労災、救済給付の認定がされている場合、これらの認定を証拠として提出することができます。

ただし、じん肺管理区分の決定だけでは注意が必要です。じん肺症には石綿肺のほかに、珪肺など様々な症状があります。じん肺管理区分の管理2以上の決定がされても、それだけでは石綿肺であることまで認定されたわけではありません。石綿肺であることを別の証拠で補う必要がある場合もあります。

一方、局所排気装置を設置すべきアスベスト工場でばく露したことについては、労災認定を受けている場合、保有個人情報開示請求をすることで、開示された資料に当時の就労状況が記載されていることが多く、それが証拠の一つとなります。

ただし、労災では業務上の疾病であるかどうかを判断するために調査をしているにすぎず、局所排気装置を設置すべきアスベスト工場内でアスベスト粉じんにばく露する作業を行っていたかどうかまでは調査されていないこともあります。そのような場合は、保有個人情報開示請求で開示された資料以外の証拠も提出して、立証していく必要があります。

じん肺管理区分の決定や救済給付の認定を受けているものの、労災認定を受けていない場合は、局所排気装置を設置すべきアスベスト工場内で作業を行っていたときにアスベスト粉じんにばく露したことの証拠を一から集める必要があります。じん肺管理区分の決定を受けた場合でも、勤務先でアスベストを取り扱っていたという抽象的な状況は把握できることが多いですが、局所排気装置を設置すべきアスベスト工場内でアスベスト粉じんにばく露する作業を行っていたのかという詳細な状況までは、それだけでは明らかにならないのが通常です。

国と和解をすることができると、国から最大1300万円(弁護士費用や遅延損害金は除く)の損害賠償金が支払われます。

建設アスベスト給付金の申請について

令和3年6月に「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立し、建設アスベスト給付金の制度が始まりました。

昭和50年10月1日から平成16年9月30日までの間(吹付け作業については昭和47年10月1日から昭和50年9月30日までの間)に、一定の屋内建設現場の建設作業に従事してアスベストにばく露し、それによって一定のアスベスト関連疾患にかかった方またはそのご遺族は、国に対して建設アスベスト給付金の申請をすることができます。

建設アスベスト給付金の特徴は、工場型アスベスト訴訟と異なり、訴訟の提起をする必要がない点です。ただし、上記の期間に一定の屋内建設現場の建設作業に従事してアスベストにばく露し、それによって一定のアスベスト関連疾患にかかったことの資料を提出する必要があります。

じん肺管理区分の決定や労災、救済給付の認定を受けている場合に、認定されたことを証拠として提出することができるのは、国家賠償請求と同様です。

また、上記期間内に一定の屋内建設現場の建設作業に従事してアスベストにばく露したことについては、労災の保有個人情報開示請求によって開示された資料や、かつての同僚に協力してもらうなどして証明することになります。

資料を提出し、建設アスベスト給付金の認定要件を満たすことが認められると、国から最大で1300万円の給付金が支払われます。ただし、建設アスベスト給付金の場合、遅延損害金や弁護士費用の支払いはありません。

国への請求で共通する重要なポイント

工場型アスベスト訴訟も建設アスベスト給付金も、国の責任が二次的であることを前提に、被災者が被った損害の2分の1を賠償する責任があるという考え方に基づいて金額が定められています。

また、どちらの制度も、対象となる期間や作業内容、疾患の種類が細かく定められています。ご自身が対象となるかどうかの判断は専門的な知識が必要となるため、まずは弁護士に相談して確認することをお勧めします。

不法行為による損害賠償請求は、損害を知ったときから3年が経過すると時効で消滅します。そのため、アスベストによる健康被害を受けた方は、早めに弁護士に相談することが大切です。

第4章:会社への損害賠償請求について

国への損害賠償請求や給付金申請とは別に、アスベスト健康被害を受けた労働者やそのご遺族は、勤務先の会社に対しても損害賠償請求をすることができる可能性があります。

会社の安全配慮義務違反とは

労働者としてアスベストにばく露する作業に従事し、それによって肺がんや中皮腫などの一定のアスベスト関連疾患にかかった場合、勤務先の会社に安全配慮義務違反などが認められれば、会社に対して損害賠償請求をすることができます。

安全配慮義務とは、使用者が労働者の生命や健康を危険から保護するように配慮する義務のことです。会社は労働者を雇用する以上、労働者が安全に働けるよう環境を整える責任があります。

アスベスト健康被害における安全配慮義務の具体的な内容としては、次のようなものがあります。まず、粉じん濃度を測定し、その結果に従って改善措置を講じる義務です。次に、アスベスト粉じんの発生や飛散を防止する措置として、局所排気装置や全体換気装置の設置、湿潤化措置をとる義務があります。また、適切な呼吸用保護具を適正に使用させる義務も含まれます。さらに、アスベスト粉じん対策について、定期的に安全教育や安全指導を行う義務もあります。

会社がアスベストの危険性を認識しつつ、このような対策をとらずに労働者を働かせたことによって、アスベスト関連疾患を発症したと主張して、会社に対して損害賠償請求をすることが考えられます。

国への請求との違い

国家賠償請求や建設アスベスト給付金の金額は、前章で説明したとおり、国の責任が二次的であることを前提に、被災者が被った損害の2分の1を賠償する責任があるという考え方に基づいて定められています。

これに対し、勤務先の会社に対しては、基本的には被災者が被った損害の全部を請求することができます。会社は労働者を直接雇用して働かせていた立場にあり、労働者の安全を守る第一義的な責任を負っているからです。

したがって、国への請求で最大1300万円を受け取った場合でも、会社に対してはそれとは別に損害賠償請求をすることで、さらに賠償金を受け取れる可能性があります。

会社への請求における課題

ただし、会社に対する損害賠償請求には、いくつかの課題もあります。

一つは、会社の特定です。アスベストにばく露した労働者の多くは、複数の作業現場で働いていた実態があり、どの会社で働いていたときにアスベストにばく露したのかを特定できないことがあります。

もう一つは、会社の存続です。アスベストによる健康被害は、長期間の潜伏を経て発症することが多いため、アスベスト関連疾患を発症した時点では、会社が既に倒産や廃業していることも少なくありません。会社が存在しない場合、損害賠償請求をしても回収できないリスクがあります。

また、労災認定や救済給付の認定を受けている場合でも、会社に対する損害賠償請求では、より詳細な立証が求められることもあります。

建材メーカーへの請求について

なお、屋内建設現場の建設作業に従事していた方については、建材メーカーに対する損害賠償請求が認められる可能性もあります。

建材メーカーは、アスベストを含む建材を製造・販売していた企業です。これらの企業に対して、危険な建材を製造・販売した責任を追及することができる場合があります。

建材メーカーへの請求についても、専門的な判断が必要となりますので、弁護士に相談することをお勧めします。

会社への請求も早めの相談が重要

会社に対する損害賠償請求についても、不法行為による損害賠償請求権には時効があります。損害を知ったときから3年、または不法行為のときから20年が経過すると、請求できなくなってしまいます。

前述のように、会社に対する損害賠償請求も、労災や救済給付などが認定されてから行うのが通常です。労災認定などの手続きに時間がかかっている間に時効が近づいてしまうこともありますので、早めに弁護士に相談して、全体的なスケジュールを把握しておくことが大切です。

第5章:手続きを進める上での注意点

アスベスト健康被害に関する給付金申請や損害賠償請求は、複数の制度が絡み合う複雑な手続きです。適切な補償を受けるためには、いくつかの重要な注意点を理解しておく必要があります。

証拠収集の重要性と方法

アスベスト健康被害の手続きで最も重要なのが、証拠の収集です。特に、国家賠償請求や建設アスベスト給付金の申請では、特定の期間に特定の場所でアスベストにばく露する作業に従事していたことを証明する必要があります。

しかし、アスベストによる健康被害は長い潜伏期間を経て発症するため、発症時には何十年も前の働いていた状況を証明しなければなりません。当時の会社が既になくなっていたり、記録が残っていなかったりすることも多く、証拠集めに苦労するケースが少なくありません。

証拠として有効なものには、労災認定や救済給付の認定があります。これらの認定を受けている場合、保有個人情報開示請求をすることで、労働基準監督署が調査した資料を入手できます。この資料には、当時の就労状況が記載されていることが多く、重要な証拠となります。

また、かつての同僚に協力してもらい、当時の作業状況について証言してもらうことも有効です。給料明細や雇用契約書、社会保険の記録なども、働いていたことを証明する資料になります。

ただし、労災認定を受けていても、それだけでは国家賠償請求や建設アスベスト給付金の要件を満たす証拠として十分でない場合もあります。労災では業務上の疾病であるかどうかを判断するために調査をしているにすぎず、局所排気装置を設置すべきアスベスト工場内で作業をしていたかどうかや、一定の屋内建設現場で作業をしていたかどうかまでは、詳しく調査されていないこともあるからです。

そのため、労災認定を受けた後も、追加の証拠を集める必要があることを理解しておくことが大切です。

時効の問題に注意する

損害賠償請求権には時効があります。不法行為による損害賠償請求は、損害を知ったときから3年が経過すると時効で消滅してしまいます。

アスベスト健康被害の場合、「損害を知ったとき」とは、一般的にはアスベスト関連疾患だと診断されたときを指すと考えられています。診断を受けてから3年以内に訴訟を提起しなければ、国や会社に対する損害賠償請求権を失ってしまう可能性があります。

特に注意が必要なのは、労災認定や救済給付の認定を待っている間に時効が近づいてしまうケースです。労災認定などの手続きには数か月から場合によっては1年以上かかることもあります。その間に時効期間が経過してしまわないよう、早めに弁護士に相談して、時効の管理をしておくことが重要です。

また、遺族補償給付については、被災労働者の死亡から5年で時効となります。ただし、時効で請求できなくなった場合でも、特別遺族給付金を請求できる場合がありますので、諦めずに相談してください。

労災認定を先に受けるメリット

第2章で説明したとおり、国家賠償請求や建設アスベスト給付金の申請、会社に対する損害賠償請求は、労災や救済給付の認定を受けてから行うのが通常の流れです。

労災や救済給付が認定されると、アスベストを取り扱う業務に従事してアスベストにばく露し、一定のアスベスト関連疾患にかかったことの裏付けとなります。この認定があることで、その後の国や会社への請求がスムーズに進みやすくなります。

また、労災認定を受けると、治療費の補償や休業補償などを受けることができ、経済的な負担が軽減されます。国や会社への損害賠償請求は手続きに時間がかかりますが、労災保険からの給付は比較的早く受け取ることができるため、生活の安定にもつながります。

さらに、労災認定の調査過程で集められた資料は、保有個人情報開示請求によって入手できます。これらの資料は、その後の国や会社への請求で証拠として活用できるため、証拠収集の面でも大きなメリットがあります。

労災認定されなかった場合の対応

労災や救済給付の申請をしたものの、認定されなかったという場合もあります。しかし、認定されなかったからといって、国や会社への損害賠償請求ができないわけではありません。

労災や救済給付が認定されなかった理由はさまざまです。アスベストへのばく露期間が短いと判断された場合や、疾患とアスベストとの因果関係が認められなかった場合などがあります。

しかし、労災認定の基準と、国家賠償請求や建設アスベスト給付金の認定基準は、必ずしも完全に一致するわけではありません。労災が認定されなくても、別の証拠を集めることで、国や会社への請求が認められる可能性はあります。

労災や救済給付が認定されなかった場合は、まず不支給の理由をしっかりと確認することが重要です。そして、その理由を踏まえて、国や会社への請求が可能かどうかを弁護士に相談してみてください。

弁護士に相談すべきタイミング

アスベスト健康被害の手続きは非常に専門的で複雑です。どの制度を利用できるのか、どの順序で手続きを進めればよいのか、どのような証拠が必要なのかを一般の方が判断するのは難しいでしょう。

理想的なのは、アスベスト関連疾患だと診断された時点で、できるだけ早く弁護士に相談することです。早い段階で相談すれば、全体的な手続きの流れを把握でき、時効の問題も避けられます。また、証拠収集についても適切なアドバイスを受けることができます。

労災認定や救済給付の申請は、ご本人やご家族だけでも行うことができます。しかし、その後の国や会社への損害賠償請求を見据えると、労災申請の段階から弁護士に相談しておくことで、必要な証拠を漏れなく集めることができ、スムーズに次の手続きに進めます。

また、国家賠償請求では国側から法的な反論がなされることがあり、それに対して適切に再反論する必要があります。建設アスベスト給付金の申請でも、担当者から追加の資料を求められることが多くあります。このような場面では、専門的な知識と経験を持つ弁護士のサポートが不可欠です。

「まだ労災の結果も出ていないのに相談してもいいのだろうか」と遠慮される方もいらっしゃいますが、早めの相談が適切な補償を受けるための近道です。アスベスト健康被害について悩まれている方は、診断を受けた時点で、ぜひ一度弁護士に相談してみてください。

まとめ

アスベスト健康被害を受けた方やそのご遺族には、労災保険をはじめ、国や会社に対する損害賠償請求、各種給付金制度など、複数の補償や救済の仕組みが用意されています。適切な手続きを踏むことで、治療費や生活費の補償を受けることができ、場合によっては1000万円を超える給付金や賠償金を受け取ることも可能です。

手続きの基本的な流れは、まず健康管理手帳の交付、労災申請、救済給付の申請といった前段階の手続きを行い、認定を受けてから、国への損害賠償請求や給付金申請、会社への損害賠償請求へと進んでいきます。労災や救済給付の認定は、その後の請求における重要な証拠となるため、最初の段階でしっかりと手続きを行うことが大切です。

ただし、これらの制度は非常に複雑で、対象となる期間や作業内容、疾患の種類が細かく定められています。また、証拠の収集には困難が伴うことも多く、時効の問題もあります。一般の方がすべてを理解して適切に手続きを進めるのは簡単ではありません。

だからこそ、アスベスト関連疾患だと診断されたら、できるだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。早い段階で相談することで、全体的な手続きの流れを把握でき、時効を避けながら計画的に証拠を集めることができます。

弁護士法人ふくい総合法律事務所では、労働災害の案件を数多く取り扱っており、アスベスト健康被害についても豊富な経験があります。ご相談いただければ、労災や給付金などの制度、会社や国に対する損害賠償請求の流れについて、具体的なアドバイスをさせていただきます。また、ご依頼いただければ、会社や国に対する損害賠償請求、建設アスベスト給付金の申請も代わりに行います。

アスベスト健康被害は、長い潜伏期間を経て突然発症するため、ご本人もご家族も大きな不安を抱えることになります。しかし、適切な手続きを踏めば、必要な補償を受けることができます。一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。福井県で地域に根ざした活動を続けてきた私たちが、皆様の真の問題解決に向けて、全力でサポートいたします。

アスベスト健康被害に遭い、労災や救済給付の申請、国や会社に対する損害賠償請求、建設アスベスト給付金の申請などの手続きについて悩まれている方は、ぜひ弁護士法人ふくい総合法律事務所にご相談ください。皆様が安心と満足を得られるよう、私たちがお手伝いいたします。