アスベスト(石綿)のよくあるQ&A

アスベスト(石綿)による健康被害が疑われる際、ご自身やご家族が給付金を受け取れるか調べようとしても、様々な疑問にぶつかる方は多いのではないでしょうか。
・「昔、アスベストを扱う仕事をしていたが、働いていた会社がもう廃業している」
・「医師の診断名が『間質性肺炎』だが、アスベストの病気として扱われるのか」
・「家族が亡くなってから時間が経ちすぎている。もう時効ではないか」
こうした理由で、申請を諦めてしまうケースは少なくありません。
しかし、そのように「諦めてしまいがちなパターン」の多くには、実は法的な解決策や別の救済制度が用意されていることがあります。
今回の記事では、アスベストの給付金申請に関して、相談者から受ける「よくあるご質問」について、専門家の視点から分かりやすく解説していきます。 ぜひ参考にしてみてください。
1. 勤務先(会社)に関するQ&A
Q1. 勤務先から「うちは労災保険に入っていない」と言われました。申請はできませんか?
A. いいえ、申請できる可能性が高いです。
事業主(会社)は、従業員(労働者)を1人でも雇っていれば、法律上、自動的に労災保険に強制加入することになっています。 したがって、会社側が「うちは労災保険に加入していない」と主張していても、法的にはその事態は存在しません。 ご自身がその会社の「労働者」として働いていたことが認められれば、労災保険の申請は可能です。
Q2. アスベストを吸った可能性のある会社が、すでに廃業・倒産しています。もう申請は無理でしょうか?
A. 諦めるのは早いです。勤務していた事実を証明する方法があります。
給付金申請において、会社が存続していることは必須の要件ではありません。 当時の会社がなくなっていても、ご自身の勤務歴を証明できれば申請は可能です。
まず行うべきことは、年金事務所で「被保険者記録照会回答票」を取得することです。 これには、過去に厚生年金に加入していた事業所(会社名)や加入期間が記載されており、勤務していたことの有力な証拠となります。
もし年金記録が残っていない場合でも、
・当時の給与明細や源泉徴収票
・社員旅行や同僚と写っている写真
・同僚の証言
といった資料から勤務の事実を立証することが考えられます。
Q3. 会社が申請書の「事業主証明」欄への記入を拒否しています。どうすればよいですか?
A. 事業主の証明がなくても、申請は可能です。
労災保険の申請書には「事業主証明」欄がありますが、会社が廃業している場合や、協力を拒否された場合でも、申請を諦める必要はありません。 労働基準監督署に、証明がもらえない事情(例:「事業主が廃業しているため」「事業主に証明を依頼したが拒否されたため」)を説明する文書を添付して提出すれば、申請は受け付けられ、審査が開始されます。
2. 診断・病気に関するQ&A
Q1. 労災認定の対象となる病気は決まっていますか?
A. はい。主に以下の5つの疾病が定められています。
1.石綿肺(および石綿肺合併症)
2.中皮腫
3.肺がん
4.びまん性胸膜肥厚
5.良性石綿胸水
これらの疾病と診断され、それが業務によるアスベストばく露が原因であると認められれば、労災保険給付の対象となります。
Q2. 医師の診断は「間質性肺炎」です。「石綿肺」と診断されていませんが、対象外ですか?
A. 対象外とは限りません。「隠れ石綿肺」の可能性があります。
石綿肺は「間質性肺炎」の一種であり、その原因を特定することは医師にとっても一般に困難です。
そのため、主治医の診断書では「間質性肺炎」や「肺線維症」となっていても、労災の審査機関による審査の結果、「石綿肺」であったと認定されるケースはしばしばあります。
主治医の診断名だけですぐに諦める必要はありません。実際の医療現場では、「間質性肺炎」「肺線維症」「胸膜炎」「肺気腫」「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」「中皮腫疑い」といった病名で診断されているケースが多くあります。しかし、これらの病名であっても、審査機関による審査の結果、最終的に労災認定されるケースが数多く存在するのです。
Q3. 医師から「肺がんの原因はアスベストではない」と言われました。労災認定は無理ですか?
A. 諦める必要はありません。医師の診断と労災認定の基準は異なります。
医師が「原因ではない」と判断したとしても、労災認定は別の基準で行われます。 労災認定に必要なアスベストばく露の状況、職歴、そして医学的な証拠(胸部CT画像など)が基準を満たしていれば、認定が得られる可能性は十分にあります。
Q4. 検査で「胸膜プラークが見つからない」と言われました。認定は難しいですか?
A. いいえ、そのようなことはありません。
「胸膜プラーク」は、アスベストを吸ったことによってできる特徴的な所見で、特に「肺がん」の認定において重要な指標となります。 しかし、この胸膜プラークが見つからなければ認定されない、ということではありません。各対象疾病には、胸膜プラークを指標としたもの以外の認定基準も用意されています。
3. 制度・手続きに関するQ&A
Q1. 「建設アスベスト給付金」制度の対象となる条件は?
A. 建設現場で働いていた方が、アスベスト関連の病気を発症した場合に対象となります。
主な条件は以下のとおりです。
・対象者:建設現場での作業に従事していた労働者、一人親方、中小事業主など。
・作業期間:吹付け作業の場合は昭和47年10月1日~昭和50年9月30日、それ以外の建設業務は昭和50年10月1日~平成16年9月30日の間が目安です。
・疾病:石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水のいずれかに罹患していること。
・申請期限:診断日や死亡日から20年以内です。 支給額は病状などに応じて550万円~1,300万円程度となります。
Q2. 「工場型アスベスト訴訟(国家賠償請求)」の条件は?
A. 特定の期間に、石綿工場で働いていた方が対象です。
主な要件は以下のとおりです。
・作業期間:昭和33年5月26日~昭和46年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内で作業に従事していたこと。
・疾病:石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚などの健康障害が確認されること。 和解が成立した場合、賠償金額は病状に応じて550万円~1,300万円前後となります。
Q3. 労災保険給付を受けていても、他の制度(給付金や賠償請求)は利用できますか?
A. はい、併用が可能です。
労災保険給付や、すでに会社から賠償金を受けている場合でも、建設アスベスト給付金や国家賠償請求は別個に認められることがあります。 それぞれが被害の全体を補うための制度であり、併用が可能です。
Q4. 労災認定が得られなかった場合でも、他の制度は申請できますか?
A. はい、申請できる場合があります。
労災認定が下りなかったとしても、その理由によっては、建設アスベスト給付金や国家賠償請求の申請が認められるケースはあります。 例えば、じん肺管理区分が労災基準に達しない場合でも、給付金制度の対象となることもあります。
Q5. 受け取った給付金や賠償金に税金はかかりますか?
A. いいえ、税金はかかりません(非課税です)。
労災保険給付、石綿健康被害救済制度、建設アスベスト給付金、国家賠償請求の和解金はいずれも、税金(所得税など)やその他の公課の対象とはなりません。
4. 時効・ご遺族に関するQ&A
Q1. 労災保険の請求期限や時効はどのようになっていますか?
A. 請求する給付の種類によって異なります。
・療養補償給付(治療費)や休業補償給付:請求事由が発生した日の翌日から2年
・遺族補償給付:ご本人が亡くなった日の翌日から5年
特に、ご遺族が請求できる遺族補償給付は5年で時効にかかってしまいます。 ただし、この時効が成立してしまった場合でも、「特別遺族給付金」という別の救済制度を利用できる可能性があります。こちらの制度にも期限がありますので、お早めにご相談ください。
Q2. 病院のカルテ(医療記録)の保存期間5年が過ぎてしまっています。申請は難しいですか?
A. 法定保存期間が過ぎていても、記録が残っている可能性はあります。
医療記録の法律上の保存期間は原則5年ですが、病院がそれより長く保存しているケースは珍しくありません。 5年を過ぎていても諦めずに問い合わせてみることが重要です。
Q3. 本人が亡くなっている場合、遺族が手続きできますか?
A. はい、可能です。
被災された労働者が亡くなっている場合でも、ご遺族が労災補償の申請、建設アスベスト給付金の申請、または国家賠償請求の訴訟提起を行うことができます。 ただし、各制度で請求できるご遺族の範囲(順位)が決まっていますので注意が必要です。
まとめ
ご自身やご家族がアスベスト被害の対象になるかご不安な方、申請手続きでお困りの方、特に福井県内で労働災害について相談できる弁護士をお探しの方は、まずは一度、労働災害の取り扱い経験が豊富な弁護士法人ふくい総合法律事務所にご相談ください。






