
労災に遭い、労災保険を申請したにもかかわらず、労基署から「労災に該当しない」と判断されてしまうケースがあります。また、労災と認められたものの、後遺障害の等級が想定より低く、十分な補償を受けられないというケースも少なくありません。
こうした労基署の決定に納得がいかないとき、「もう仕方がない」と諦めてしまう方もいらっしゃいます。しかし、労基署の決定は最終的なものではありません。「審査請求」という不服申立ての手続きによって、決定を覆せる可能性があるのです。
当事務所は福井市に拠点を置き、労働災害に関するご相談を数多くお受けしてきました。実際に、審査請求によって後遺障害の等級が上がり、適正な補償を受けられるようになった方もいらっしゃいます(解決事例はこちら)。
この記事では、労災が認められなかった場合や等級認定に不満がある場合に取りうる手続きとして、「審査請求」を中心に詳しく解説します。労基署の決定に疑問をお持ちの方はぜひ参考にしてください。
審査請求とは何か
審査請求とは、労基署が行った労災保険給付に関する決定に不服がある場合に、その決定の見直しを求める手続きです。申請先は労基署ではなく、その労基署を管轄する都道府県労働局の「労働者災害補償保険審査官」となります。
審査請求を行うと、労働者災害補償保険審査官が改めて申請内容を精査し、労災に該当するかどうかや後遺障害の等級などを判断します。審査の結果、原処分が間違っていると認められれば、労基署の決定が取り消され、正しい労災保険の給付を受けられるようになります。
審査請求を検討すべきケースとしては、まず「そもそも労災に該当しない」と判断された場合が挙げられます。業務中や通勤中の事故であるにもかかわらず労災と認めてもらえなかった場合には、審査請求によって判断を覆せる可能性があります。
次に、後遺障害の等級認定に納得できない場合も審査請求の対象となります。認定された等級が低すぎると、支給される障害補償の金額も低くなってしまいます。適正な等級認定を受けるために審査請求を行うことは十分に意味があります。
ただし、審査請求には期限があります。労基署による決定があったことを知った日から3か月以内に手続きを行わなければなりません。この期限を過ぎてしまうと、審査請求を受け付けてもらえなくなります。労基署の決定に不服がある場合には、早めに対応を検討することが大切です。
審査請求の手続きと流れ
審査請求を行う際は、審査請求書を作成し、都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に提出します。審査請求書の書式は厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。
審査請求が受理されると、担当の審査官が審査を開始します。審査官は裁判所における裁判官のような役割を担い、審査請求人からの聴取手続きを行うほか、原処分を行った労基署からも意見を聴取します。さらに、審査官自身が独自に資料を収集するなどして、原処分を取り消すべきかどうかを判断します。
審査請求をしてから結論が出るまでには、相当の期間を要するのが実情です。半年~1年程度かかるケースも多いです。
なお、審査請求から3か月が経過しても結論が出ない場合には、審査官が審査請求を棄却したものとみなすことができます。この場合、審査請求の結果を待たずに、次の段階である「再審査請求」や「行政訴訟」に進むことが可能となります。ただし、これは義務ではありませんので、そのまま審査請求の結論を待ち続けることもできます。
審査請求の手続き自体は、書式に従って必要事項を記入し提出するというシンプルなものです。しかし、審査請求書を提出すれば自動的に良い結果が得られるというわけではありません。審査請求を成功させるためには、なぜ原処分が間違っているのかを論理的に説明し、その主張を裏付ける証拠を揃えることが重要です。
審査請求のポイント
審査請求は、一度決定された労基署の処分を覆そうとするものですから、決して簡単なことではありません。審査請求を行えば高い確率で良い結果が得られると期待できるものではなく、成功のためには十分な準備が必要です。
まず理解しておくべきことは、労働者災害補償保険審査官は労基署とは別の機関ではあるものの、同じ行政機関であり、判断の枠組みも基本的には同じだということです。そのため、労基署に提出したのと同じ資料をもって同じような主張を繰り返しても、判断を変更させることは難しいといえます。
審査請求を成功させるためには、まず原処分の理由をよく把握することが重要です。労基署がなぜそのような判断を下したのか、どの点が問題とされたのかを正確に理解しなければ、効果的な反論を組み立てることはできません。
次に、自身の主張を裏付ける有用な証拠資料をできるだけ収集することが必要です。新たな証拠や、主治医による診断書、専門医による意見書、新たに実施した検査結果などが有力な材料となります。特に医学的な判断が争点となる場合には、医師の診断書や意見書が決定的な役割を果たすことがあります。
そして、収集した証拠をもとに、なぜ原処分が間違っているのかを筋道立てて論じることが求められます。感情的な訴えではなく、客観的な証拠に基づいた論理的な主張を展開することで、審査官を説得できる可能性が高まります。
これらの作業は、裁判所での訴訟において弁護士が行う業務と共通しています。原処分の問題点を分析し、証拠を収集し、論理的な主張を組み立てるという一連の作業は、法律の専門家である弁護士が得意とするところです。弁護士に依頼すれば必ず良い結果が得られるとお約束することはできませんが、専門家のサポートを受けることで成功の可能性は高まるといえるでしょう。
審査請求が認められなかった場合
審査請求を行っても認められなかった場合には、さらに「再審査請求」や「行政訴訟」という手段で判断を争うことができます。
再審査請求とは、労働者災害補償保険審査官の決定に不服がある場合に、労働保険審査会に対して行う不服申立ての手続きです。期限は審査請求の決定を受けてから2か月以内です。ただし、労働保険審査会も同じ行政機関であり判断の枠組みも同じであるため、現実には判断が覆る可能性は低いといえます。
行政訴訟は、裁判所に判断を求める手続きです。裁判所は行政機関から独立した機関であり、国とは異なる独自の枠組みで判断を行います。そのため、審査請求や再審査請求では認められなかった判断が、行政訴訟では覆る可能性があります。提起の期限は、審査決定または再審査決定を受けてから6か月以内です。
もっとも、労災の行政訴訟の勝訴率は2割程度という統計もあり、行政訴訟を提起すれば労災が認められる可能性が高いとはいえません。行政訴訟を検討される場合には、見通しも含めて弁護士にご相談されることをおすすめします。
まとめ

労災保険の申請が認められなかった場合や、後遺障害の等級認定に納得できない場合でも、諦める必要はありません。審査請求によって労基署の決定を覆せる可能性があります。
審査請求は都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に対して行う手続きで、決定を知ってから3か月以内に申立てをしなければなりません。成功のためには、原処分の理由を正確に把握し、主張を裏付ける証拠を収集した上で、論理的に反論を組み立てることが重要です。
審査請求が認められなかった場合には、再審査請求や行政訴訟によってさらに争うことも可能です。
当事務所では、審査請求によって後遺障害の等級が上がった方の事例もございますので、ぜひ解決事例もご覧ください。
労災が認められなかった、後遺障害の等級が低くて納得できないなど、労基署の決定に疑問をお持ちの方は、お早めに弁護士へご相談ください。






