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【射出成型機の労災事故】指の切断や火傷…会社への損害賠償はできる?弁護士が解説
こんにちは。弁護士法人ふくい総合法律事務所、代表弁護士の小前田 宙(こまえだ ひろし)です。
福井県は「ものづくり」が盛んな地域であり、多くの工場で様々な機械が稼働しています。その中でも、プラスチック製品の製造に欠かせない「射出成型機」は、県内の多くの現場で利用されています。
しかし、この便利な機械は、ひとたび操作を誤ったり安全管理が疎かになったりすると、指の切断や重度の火傷など、取り返しのつかない重大な事故を引き起こす凶器となります。
突然の事故により、身体的な痛みはもちろん、「これまで通り働けるのか」「家族の生活はどうなるのか」といった深い不安を抱えておられることとお察しします。
本記事では、射出成型機による事故の危険性と、被害に遭われた方が受け取るべき正当な補償――特に「労災保険」だけでなく「会社に対する損害賠償」の可能性について、弁護士の視点から分かりやすく解説いたします。
第1 射出成型機による労働災害の事例と危険性

射出成型機とは、高温で溶かしたプラスチック樹脂を金型に流し込み、冷却・固化させて製品を作る機械です。自動車部品から日用品まで幅広く製造できる反面、強力な圧力(型締め力)と高温を伴うため、重大な労働災害が発生しやすい機械でもあります。
私のこれまでの経験上、特に以下のような事故が多く見受けられます。
1. 挟まれ・巻き込まれ事故(指や腕の切断)
最も深刻かつ多発しているのが、金型部分(型締めユニット)への挟まれ事故です。
機械のトラブルで停止した際、様子を見るために金型内に手を入れたところ、突然機械が作動し、指や手を挟まれてしまうケースです。射出成型機のプレス圧力は数トンから数百トンに及ぶため、指の切断や手の粉砕骨折など、重篤な後遺障害が残る可能性が極めて高いのが特徴です。
2. 高温物・飛散物による火傷
射出成型機は樹脂を数百度に加熱します。ノズルの詰まりを解消しようとした際に、高温の樹脂が勢いよく噴出し、顔や腕に深刻な火傷を負う事故も発生しています。また、金型自体も高温になっているため、接触による火傷のリスクも常にあります。
3. 金型の落下や激突
金型の交換作業中に、重量のある金型が落下して足の指を骨折したり、ホイストクレーン操作中に激突したりする事故です。
なぜ事故は起きるのか?
これらの事故の多くは、「詰まった製品を取り除く」「金型の段取り替えをする」といった非定常作業中に発生しています。
本来であれば、安全扉を開ければ機械が止まる「インターロック機能」が働くはずですが、作業効率を優先するあまり、安全装置が無効化されていたり、十分な安全教育がなされていなかったりするケースが後を絶ちません。
第2 被災した際に受けられる「労災保険給付」の種類
業務中や通勤中に事故に遭った場合、まずは国の制度である「労災保険」から給付を受けることになります。
突然の怪我で働けなくなると、治療費や当面の生活費が心配になるかと思いますが、労災保険には被災された方とそのご家族の生活を支えるための様々な給付が用意されています。
主な給付内容は以下の通りです。
1. 療養補償給付(治療費)
怪我の治療にかかる費用です。診察代、薬代、手術費用、入院費用などが対象となります。
労災指定病院であれば、窓口での支払いは不要(現物給付)です。指定外の病院にかかった場合は、一旦ご自身で立替払いをして、後から国に請求することで費用が戻ってきます(現金給付)。
ポイント: 健康保険証は使わず、「労災です」と伝えて受診してください。
2. 休業補償給付(生活費の補填)
怪我の療養のために仕事を休み、給与が支払われない場合に支給されます。
休業4日目から、給付基礎日額の約80%(特別支給金を含む)が支給されます。これにより、働けない期間中の生活の不安を軽減することができます。
3. 障害補償給付(後遺障害への補償)
治療を尽くしても、残念ながら指の欠損や関節の機能障害などの「後遺障害」が残ってしまった場合に支給されます。
障害の程度に応じて第1級から第14級までの等級が認定され、等級に応じて「年金(毎年支給)」または「一時金(一回のみ支給)」が支払われます。
4. 遺族補償給付
万が一、被災された方が亡くなられた場合、遺族の方に対して年金や一時金が支給されます。
5. その他の給付
・葬祭料(葬祭給付): 葬儀にかかった費用の一部が支給されます。
・傷病補償年金: 療養開始から1年6ヶ月経過しても怪我が治っておらず、傷病等級に該当する場合に、休業補償給付に代わって支給されます。
労災保険は、労働者を守るための重要な制度です。会社が「労災隠し」をして申請を渋るような場合でも、労働者個人で申請することは可能ですので、遠慮なくご相談ください。
しかし、実は労災保険だけでは、被害者が被った損害の全てが補填されるわけではありません。 特に「精神的苦痛に対する慰謝料」は、労災保険からは支給されないのです。
第3 労災保険だけではない?会社に対する「損害賠償請求」
「労災保険が下りたから、これ以上の請求はできないのだろう」
そのように諦めてしまっている方は、実は少なくありません。
しかし、労災保険はあくまで国による「最低限の補償」であり、被害者が被った損害の全てがカバーされるわけではないのです。
最も大きな違いは、「慰謝料(精神的苦痛に対する賠償)」が含まれていないという点です。
事故の原因が会社側の安全管理の不備にある場合、労災保険とは別に、会社に対して民事上の「損害賠償請求」を行える可能性があります。
1. 会社の責任を問う根拠:「安全配慮義務違反」とは?
会社(使用者)は、従業員が安全に働ける環境を整える法的な義務を負っています。これを「安全配慮義務(あんぜんはいりょぎむ)」といいます(労働契約法第5条、民法第415条)。
もし、会社がこの義務を怠り、その結果として事故が起きたのであれば、会社は被害者に対して損害賠償責任を負わなければなりません。
2. 射出成型機の事故で「会社の責任」が問われるケース
射出成型機の事故において、具体的にどのようなケースで会社の責任(安全配慮義務違反)が認められやすいのか、例を挙げます。
・安全装置(インターロック)の無効化
「いちいち機械を止めると生産効率が落ちる」という理由で、安全扉を開けても機械が止まらないように改造していたり、スイッチを無効化していたりする場合です。これは極めて悪質な義務違反と言えます。
・安全教育の不足
新入社員や経験の浅い従業員に対し、「どこが危険か」「トラブル時にどう対処すべきか(まずは電源を切る等)」といった十分な教育・指導を行わずに作業させていた場合です。
・不適切な作業指示
機械が稼働している状態で、「詰まった樹脂を取れ」「金型を調整しろ」などと危険な作業を指示していた場合です。
・老朽化した機械の放置
センサーの故障や配線の不具合など、予見できた故障を修理せず放置していた結果、誤作動が起きた場合です。
3. 会社への請求で得られる賠償
会社への責任が認められた場合、労災保険ではカバーされない以下のような損害を請求できます。
・入通院慰謝料: 怪我の治療で入通院を強いられた精神的苦痛に対する賠償
・後遺障害慰謝料: 後遺障害が残ってしまったことによる精神的苦痛に対する賠償
・休業損害の差額:仕事を休んだり、通院のために早退・遅刻したりしたことで減ってしまった収入を賠償するもの(労災で補償されない部分の差額)
・逸失利益の差額: 後遺障害によって将来得られるはずだった収入の減少分(労災給付だけでは賄いきれない部分)
これらを合計すると、労災保険の給付額に加えて、数百万円から数千万円の賠償金が認められるケースも珍しくありません。
後遺障害等級認定の重要性と弁護士サポートの必要性
労災で後遺障害が残ってしまった場合、最も重要なのは適正な後遺障害等級認定を受けることです。等級認定の結果により、受けられる補償額が大きく変わるため、この手続きは被災者の将来を左右する重要なプロセスといえます。
後遺障害等級認定が重要な理由
労災で負傷や疾病を負い、治療を続けても症状が残る場合、「症状固定」と判断された時点で後遺障害等級の認定を受けることができます。症状固定とは、これ以上治療を続けても症状の改善が期待できない状態を指し、この段階で治療費の補償は終了します。
後遺障害等級は1級から14級まであり、等級によって労災保険から支給される金額が大きく変わります。1級から7級までは年金として継続的に支給され、8級から14級までは一時金として支給されます。たとえば、同じような症状でも認定される等級が1つ違うだけで、数百万円から数千万円の差が生じることも珍しくありません。
弁護士によるサポートのメリット
適切な後遺障害等級認定を受けるためには、労災に詳しい弁護士のサポートが極めて有効です。
診断書の記載内容のチェックでは、弁護士が医師に対して後遺障害認定に必要な検査や記載事項をアドバイスすることで、認定に有利な診断書を作成してもらうことができます。医師が見落としがちな重要なポイントを事前に伝えることで、診断書の質を大幅に向上させることが可能です。
労働基準監督署での面談対策も重要なサポートです。多くの被災者にとって労基署での面談は初めての経験であり、緊張や不安から症状を適切に説明できないことがあります。弁護士が事前に面談の流れや質問内容を説明し、症状の伝え方を練習することで、より適切な認定を受けられる可能性が高まります。
代理人としての交渉権限も弁護士の大きなメリットです。社会保険労務士とは異なり、弁護士は代理人として会社との交渉を行うことができます。労災事故の当事者が直接会社と交渉するのは精神的な負担が大きく、法的な知識も必要になります。交渉の進め方によっては請求できるはずの損害が請求できなくなってしまうリスクもあります。
労災申請から損害賠償請求まで一貫したサポートを受けられることも重要です。労災申請は最低限の補償を受けるためのものですが、会社に責任がある場合は、慰謝料や完全な逸失利益の賠償請求が可能です。弁護士であれば、労働審判や民事訴訟などの方法により、被災者の代理人として包括的な損害賠償請求を行うことができます。
まとめ

射出成型機による事故は、一瞬にして健康な体と平穏な日常を奪い去ります。
指の切断や重度の火傷は、仕事だけでなく、日常生活の些細な動作にも支障をきたし、将来への不安は計り知れないものでしょう。
「会社にお世話になっているから」「波風を立てたくない」
そのように考え、本来受け取るべき補償を諦めてしまう気持ちも、私には痛いほどよく分かります。特にここ福井のような地域社会では、人間関係を気にしてしまうこともあるでしょう。
しかし、損害賠償請求は、被害者が生活を再建し、未来へ歩み出すための正当な権利です。 決して、後ろめたいことではありません。
また、あなたが声を上げることで、会社の安全管理体制が見直され、次の犠牲者を防ぐことにも繋がります。
弁護士法人ふくい総合法律事務所は、地域密着型の法律事務所として、これまで数多くの労働災害案件に向き合ってきました。
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