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業務上の事故でご家族を亡くされた際、その悲しみははかり知れないものです。
と同時に今後の生活への金銭的な不安を考える方もいるかと思います。
そこで、労災保険では、死亡労働災害の場合に各給付金が用意されています。
これらは今後の生活のためにも、必ず申請しておきましょう。
また、場合によっては労災だけでは十分な補償を受けられない場合もあります。
この記事では、ご家族を亡くされた際の労災や損害賠償について解説します。
ご家族を亡くされ、悲しみや忙しさのなか、ご自身で進めていくのはとても大変かと思いますので、ぜひ私たちにご相談ください。
業務に関わる死亡事故は労災にあてはまる
仕事に関連する事故で亡くなってしまった場合は、基本的に労災にあてはまります。労災とは、仕事中や通勤中に起きた事故やケガに対して補償を行う制度です。怪我だけでなく、最悪の場合の死亡事故も対象となります。
具体的には、次のような場合も労災として認められます。
- 工場でプレス機に挟まれて亡くなった場合
- 建設現場で高所から転落して亡くなった場合
- 通勤中の交通事故で亡くなった場合
つまり、仕事に関係する場所や時間で起きた不幸な事故であれば、それが死亡事故であっても労災の対象となり、遺族が補償を受けられる可能性があります。
死亡事故において受け取れる労災給付
労働者が仕事中の事故で亡くなった場合、遺族は労災保険から以下の給付を受けることができます。
遺族補償給付
1つ目は「遺族補償給付」です。
「遺族補償年金」と「遺族補償一時金」の2種類があります。遺族補償年金は、被災労働者の収入で生計を立てていた家族向けの年金です。
対象は配偶者、子供、親、孫、祖父母、兄弟姉妹(条件あり)。金額は遺族の人数と被災者の給与に応じて決まります。
例えば
・遺族1人:給付基礎日額の153日分
・遺族2人:給付基礎日額の201日分
・遺族3人:給付基礎日額の223日分
・遺族4人:給付基礎日額の245日分
上記のようになります。さらに、300万円の遺族特別支給金(一時金)が加算されます。
遺族補償一時金は、年金を受け取れる遺族がいない場合に支給されます。金額は給付基礎日額の1000日分です。300万円の遺族特別支給金も支給されます。
葬祭料
2つ目の受け取れる給付は、葬祭料です。
葬祭料は、葬儀を行った人に支給されます(遺族に限りません)。金額は「31万5000円 + 給付基礎日額の30日分」です。
ただし、労災保険には限界があります。
なぜなら、慰謝料は支給されないからです。
ですから、労災保険は一家の大黒柱を失った経済的損失を完全に補うまでにはならないのです。
これらの補償を超える損害については、会社に対して別途損害賠償を請求する必要があります。
労災の請求手続き方法
遺族補償給付と葬祭料の2種類の給付手続き方法について解説します。
遺族補償給付を請求する際は、所轄の労働基準監督署に必要書類を提出します。
遺族補償年金を請求する場合
・「遺族補償年金・複数事業労働者遺族年金支給請求書」(業務災害の場合)
・「遺族年金支給請求書」(通勤災害の場合)
遺族補償一時金を請求する場合
・「遺族補償一時金・複数事業労働者遺族一時金支給請求書」(業務災害の場合)
・「遺族一時金支給請求書」(通勤災害の場合)
上記、いずれの場合も以下の添付書類が必要です。
- 被災労働者の死亡を証明する書類(死亡診断書など)
- 被災労働者と受給資格者の身分関係を証明する書類(戸籍謄本など)
- 被災労働者の収入で生計を維持していたことを証明する書類
注意点として、遺族補償給付の請求権は、被災労働者が亡くなった日の翌日から5年で時効となります。そのため、早めの手続きを行いましょう。
次に、葬祭料の請求方法です。
葬祭料の請求も労働基準監督署に行います。必要な書類は、以下のとおりです。
- 「葬祭料又は複数事業労働者葬祭給付請求書」(業務災害の場合)
- 「葬祭給付請求書」(通勤災害の場合)
添付書類は遺族補償給付と同様ですが、すでに提出済みの場合は再提出不要です。
注意点として、葬祭料の請求権は、被災労働者が亡くなった日の翌日から2年で時効となります。
遺族補償給付よりも期限が短いので注意が必要です。
これらの手続きは複雑で、悲しみの中での対応は大変かもしれません。
不明な点があれば、労働基準監督署や弁護士に相談することをおすすめします。
十分な補償を受け取るために損害賠償も検討
労災保険には限界があり、慰謝料は支給されません。
また、逸失利益(将来得られたはずの収入)の補償が不十分な場合もあります。
そのため、労災保険の補償だけでは十分でない場合が多く、会社(使用者)に対して追加の損害賠償請求を行うことも検討した方が良いでしょう。
会社に安全配慮義務違反(機械・設備の不備、安全管理・教育の不備など)があった場合や、他の従業員のミスによる事故だった場合には、損害賠償請求が可能です。
損害賠償請求では、労災保険では補償されない死亡慰謝料や、労災保険の補償を超える逸失利益を請求できます。
これにより、より十分な補償を受けられる可能性があります。
なお、会社が労災保険に加入していない場合は、全ての補償を民事上の損害賠償請求として会社に請求する必要があります。
重要なのは、労災保険の補償を受けても、それだけでは十分な補償とならない場合が多いということです。
会社への損害賠償請求について
労働災害による死亡事故が発生した場合、遺族は会社に対して損害賠償請求を行うことができます。この請求には主に死亡慰謝料と死亡逸失利益が含まれます。
死亡慰謝料は、労災事故により労働者が死亡した場合に支払われる精神的苦痛に対する補償です。金額は被災者の家庭内での立場によって異なり、一般的に以下のような基準があります。
- 被災者が一家の支柱の場合:2800万円
- 被災者が母親、配偶者の場合:2500万円
- その他の場合:2000万円~2500万円
また、近親者固有の慰謝料が認められることもあります。
重要なのは、労災保険からの給付金は死亡慰謝料から差し引かれないという点です。
死亡逸失利益は、労災事故により失った将来の稼働収入を指します。計算方法は以下の通りです。
(労災事故前の年収)×(1-生活費控除率)×(労働能力喪失期間に対応する係数)
例えば、40歳で年収400万円、扶養家族が3人の場合、逸失利益は約5131万5600円となります。
また、死亡逸失利益については、労災保険からの給付金の一部が差し引かれます。
・遺族(補償)年金(または一時金):賠償交渉妥結時点または判決時点までに受領済みの分が差し引かれます。
・遺族特別年金(または一時金)と遺族特別支給金:差し引かれません。
労災死亡事故を弁護士に依頼すべき理由
労災死亡事故が発生した場合、弁護士への相談を検討してください。
安全配慮義務違反の主張立証は法律の専門家である弁護士に頼む必要があります。
この主張には、業務事故に関係する法令や行政通達で定める会社の安全配慮措置の規定を調査し、その違反を証明することが求められます。
よって、法律や行政通達に精通している弁護士でなければ、この複雑な作業を適切に行うことは困難です。
さらに、安全配慮義務違反を裏付ける証拠の取捨選択も重要ですが、これも被災者やその遺族が独自で行うには限界があります。
また、適切な賠償金を受け取るためにも弁護士の助けが必要です。
加害者や会社は、必ずしも被災者にとって適切な賠償金を提示するとは限りません。
事故型業務災害に詳しい弁護士に依頼することで、過去の裁判例も踏まえながら、適切な賠償金を獲得できる可能性が高まります。
労災死亡事故で弁護士がサポートできること
労災死亡事故が発生した際、弁護士は遺族に対して多岐にわたるサポートを提供することができます。
まず、弁護士は遺族の代理人として、会社や関係者に対する損害賠償請求を行います。
これには慰謝料、逸失利益、葬儀費用などの請求が含まれ、会社側との交渉や必要に応じて裁判手続きを進めます。
また、労災保険の請求に関しても弁護士のサポートは有効です。
労災保険の申請手続きは複雑な場合があるため、弁護士は必要書類の作成や申請手続きに関するアドバイスを提供し、遺族が適正な補償を受けられるよう支援します。
さらに、事故が企業側の過失や安全対策の不備によって発生した場合、弁護士は刑事責任の追及にも関与します。
被害者側の代理人として事故原因を追及し、刑事責任を問うための証拠収集や警察・検察との連携をサポートします。
労働基準監督署との調整も弁護士の重要な役割です。
監督署が行う調査に際して、弁護士は遺族の利益を守るためにやり取りをサポートし、事故の詳細を明確にする手助けをします。
最後に、弁護士は和解交渉や訴訟の代理人としても活動します。
会社や保険会社との和解では最適な条件を目指し、和解が難しい場合には裁判での訴訟手続きを行い、適正な賠償を勝ち取るための法的サポートを提供します。