
労災事故で治療を続けたものの、痛みやしびれが残ってしまった。労働基準監督署に後遺障害の申請をしたところ、認定されたのは14級だった。
そんな方から、よくこう聞かれます。
「14級だと、いくらもらえるのでしょうか」
「思ったより少ないのですが、これで終わりなのでしょうか」
14級は、労災の後遺障害のなかで最も多く認定される等級です。それだけに、「よくあることだから」と受け止めて、そのまま終わらせてしまう方が少なくありません。
私は福井で15年以上、労働災害の事件を扱ってきました。その経験から申し上げると、14級の方こそ、労災保険の手続だけで終わらせると大きく損をします。理由は後ほど数字でお示ししますが、労災保険から受け取れる金額と、会社に請求できる金額とでは、桁が違ってくることがあるためです。
この記事では、14級とはどのような状態を指すのか、労災保険からいくら支払われるのか、そして会社への請求まで進むと金額がどう変わるのかを説明します。「認定されたのが14級で納得できない」という方や、「そもそも非該当だった」という方にも読んでいただきたい内容です。
労災の後遺障害14級とは、どのような状態か
後遺障害の等級は、労働者災害補償保険法施行規則の別表第一「障害等級表」に定められています。14級には次の障害が挙げられています。
・一眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの(1号)
・三歯以上に対し歯科補てつを加えたもの(2号)
・一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの(2号の2)
・上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの(3号)
・下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの(4号)
・一手の母指以外の手指の指骨の一部を失つたもの(6号)
・一手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの(7号)
・一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの(8号)
・局部に神経症状を残すもの(9号)
このうち、実務で圧倒的に多いのが14級9号「局部に神経症状を残すもの」です。骨折や打撲をした部分の痛み、しびれ等が、治療を終えたあとも残っているという状態がこれにあたります。
14級は等級表のいちばん下にあたるため、「軽いものだ」と受け取られがちです。しかし、痛みやしびれを抱えたまま毎日働き続けることの負担は、決して軽いものではありません。法律上も、後遺障害として補償の対象になります。
14級で労災保険から支払われる金額
14級は、まとめて支払われる一時金の等級です。受け取れるものは3つあります。
障害補償一時金は、給付基礎日額の56日分です。給付基礎日額は、労働基準法の平均賃金にあたる金額です。事故の前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割って求めます。
障害特別支給金は、8万円です。賃金の額に関係なく、等級だけで決まる定額です。
障害特別一時金は、算定基礎日額の56日分です。日数は障害補償一時金と同じですが、基礎になる日額が違います。算定基礎日額のほうは、事故前1年間に受け取ったボーナスなど特別給与の総額を365で割った金額です。ボーナスがなければ、この部分はありません。なお、この計算のもとになる特別給与の額には上限があります。給付基礎年額の20%にあたる額と150万円のうち、低いほうが上限です。
仮に給付基礎日額が1万円だとすると、障害補償一時金は56万円、これに障害特別支給金8万円が加わって、およそ64万円ということになります。
「思ったより少ない」と感じた方が多いのではないでしょうか。実際、この金額を見て「こんなものか」と諦めてしまう方をたくさん見てきました。しかし、話はここで終わりません。
労災保険だけで終わらせると、受け取れる額の3分の1以下になることがある
労災保険には、慰謝料という項目がありません。痛みやしびれを抱えて生活することへの精神的な補償は、労災保険からは1円も出ないのです。
また、後遺障害が残ると以前と同じようには働けなくなり、将来の収入が減ります。この減った分を逸失利益といいますが、これも労災保険だけでは十分に補われません。
事故について会社に責任がある場合、これらは会社へ請求できます。機械の安全装置が外れたままだった、無理な作業をさせていた、同僚の不注意が原因だったといった事情があれば、会社は安全配慮義務違反や使用者責任を問われます。
年収400万円の方のケースで計算してみます。
後遺障害慰謝料は、裁判で用いられる基準で14級が110万円です。逸失利益は、労働能力喪失率5%を使って計算します。ここで期間の扱いに注意が必要です。原則は症状固定のときの年齢から67歳までですが、14級のような神経症状では、症状が時間とともに和らぐと考えられるため、5年程度に限定されることが多くあります。この期間で計算すると、逸失利益はおよそ92万円です。合わせて202万円です。
ここで一つ、仕組みの説明が必要です。会社に請求するとき、労災保険からすでに受け取った障害補償一時金は、賠償額から差し引かれることになっています。同じ損害について二重に受け取ることはできないからです。一方で、障害特別支給金は差し引かれません。こちらは損害を埋めるための給付ではなく、社会復帰を支援するための給付だからです。
そうすると、会社から受け取るのは202万円から56万円を引いた146万円。労災保険の64万円と合わせて、手元に残るのはおよそ210万円になります。
労災保険の手続だけで終わらせていれば64万円でした。受け取れるはずの3分の1以下です。
なお、これはあくまで一例です。年収や年齢、症状の内容によって金額は変わりますし、会社に責任がなければ請求はできません。ご自身のケースでいくらになるかは、個別に検討する必要があります。
14級は「認定されるかどうか」も分かれ目になる
14級9号については、金額の話の前に、そもそも認定されるかどうかで結果が大きく変わります。同じように痛みが残っていても、非該当とされる方がいるからです。
これまで多くの事案を見てきた経験から申し上げると、判断が分かれるのは次のような点です。
事故の直後から症状を訴え続けていたか。通院が途切れずに続いていたか。診断書やカルテに症状の記載が残っているか。画像やその他の検査で、症状を裏づける所見が示されているか。
痛みやしびれは本人にしか分からない症状です。だからこそ、記録として残っているかどうかが結果を左右します。「痛いけれど仕事を休めないので通院を減らした」という方は少なくありませんが、それが後の認定で不利に働くことがあるのです。
逆に言えば、認定に納得できないときには、手を打つ余地があります。労働基準監督署の決定に不服がある場合、審査請求という手続を取ることができます。当事務所でも、14級とされた認定を審査請求で12級に変えた案件を扱ってきました。14級と12級では、最終的に獲得する金額は大きく変わります(労災の後遺障害12級について詳しくはこちら)。
審査請求には、決定があったことを知った日の翌日から3か月以内という期限があります。疑問があるなら早めに動いてください。
「この金額で弁護士に頼む意味があるのか」という疑問について
14級の方から、こう聞かれることがあります。
「64万円のために弁護士に頼んだら、費用のほうが高くつくのではないですか」
もっともな疑問だと思います。ただ、この問いには前提の取り違えがあります。弁護士にご相談いただく意味は、64万円をどうにかすることではなく、その先にある会社への請求を検討することにあるからです。先ほどの例で言えば、動くかどうかで手元の金額が64万円と210万円に分かれます。
もっとも、すべてのケースで会社に請求できるわけではありません。会社に落ち度がない事故もありますし、費用を差し引くと手元がほとんど増えない場合もあります。当事務所では、弁護士に依頼する経済的な合理性が認められない場合には、その旨を正直にお伝えしています。無理にお引き受けすることはしません。
ですから、まずは「請求できる見込みがあるのかどうか」だけでも確認してみてください。初回のご相談は無料です。そこで見込みが薄いと分かれば、それはそれで納得して次に進めるはずです。
まとめ
労災の後遺障害14級について、要点を整理します。
労災保険からは、障害補償一時金として給付基礎日額の56日分と、障害特別支給金8万円が支払われます。給付基礎日額が1万円であれば、およそ64万円です。
しかし労災保険には慰謝料がなく、逸失利益も十分には補われません。会社に責任があるなら、この2つを別途請求できます。すでに受け取った障害補償一時金は差し引かれますが、それでも手元に残る金額は大きく変わります。
そして、14級は認定されるかどうかも、12級に上がるかどうかも、動く余地のある等級です。記録が残っているか、主張を尽くしたかで結果が変わります。
痛みやしびれを抱えたまま、「よくあることだから」と諦める必要はありません。福井で労災事故にお悩みの方は、一度ご相談ください。ご相談の予約は、電話でもメールでもLINEでも可能です。初回無料ですので、お気軽にお問い合わせください。






