
労災事故で後遺障害8級と認定された。あるいは、これから認定を受けようとしている。
8級は、労災保険の給付という点で一つの区切りにあたる等級です。一時金として受け取れる金額が最も大きい等級であり、同時に、1つ上の7級からは年金に切り替わります。
私は福井で15年以上、労働災害の事件を扱ってきました。8級の方から受ける相談で多いのが、「この認定で妥当なのか」という点です。8級の障害は、条文を並べてみると上にも下にも同じような等級があるものばかりで、どこに当てはまるかで結果が大きく変わります。
この記事では、8級とはどのような状態を指すのか、労災保険からいくら支払われるのか、他の等級とどこで分かれるのか、そして会社への損害賠償について説明していきます。
労災の後遺障害8級とは、どのような状態か
どの障害が何級かは、労働者災害補償保険法施行規則の別表第一(障害等級表)が定めています。8級に挙げられているのは次の障害です。
・一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの(1号)
・せき柱に運動障害を残すもの(2号)
・一手の母指を含み二の手指又は母指以外の三の手指を失つたもの(3号)
・一手の母指を含み三の手指又は母指以外の四の手指の用を廃したもの(4号)
・一下肢を五センチメートル以上短縮したもの(5号)
・一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの(6号)
・一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの(7号)
・一上肢に偽関節を残すもの(8号)
・一下肢に偽関節を残すもの(9号)
・一足の足指の全部を失つたもの(10号)
片目の失明、背骨の運動障害、指の欠損、脚の短縮、関節が完全に使えなくなった状態、骨がくっつかない状態。いずれも、日常生活にも仕事にも影響が及ぶ障害です。
8級は一時金で受け取れる最大の等級
労災保険の障害補償給付は、7級以上が年金、8級以下が一時金です。8級はその境目の、一時金側の一番上にあたります。
障害補償一時金は、給付基礎日額の503日分です。給付基礎日額とは、労働基準法にいう平均賃金のことで、事故前3か月間の賃金総額をその期間の暦日数で割って求めます。
障害特別支給金は65万円です。等級だけで決まる定額で、賃金の額に関係ありません。
障害特別一時金は、算定基礎日額の503日分です。算定基礎日額は、事故前1年間に受け取ったボーナスなど特別給与の総額を365で割った金額で、給付基礎日額とは別に計算します。なお、この計算のもとになる特別給与の額には上限があります。給付基礎年額の20%にあたる額と150万円のうち、低いほうが上限です。
給付基礎日額が1万円の方なら、障害補償一時金503万円に障害特別支給金65万円が加わって、およそ568万円になります。ボーナスがあった方は、さらに障害特別一時金が上乗せされます。
ここで、7級と比べてみます。7級は年金で、給付基礎日額の131日分が毎年支払われます。同じ条件なら年に131万円、これに障害特別支給金159万円です。
1年目で比べると、8級の568万円に対して7級は290万円。8級のほうが多く見えます。ところが2年目で421万円、3年目で552万円と迫り、4年目には683万円となって7級が追い越します。その後は差が開き続けます。
一時金は早くまとまって受け取れる利点があり、年金は生涯続く安心があります。どちらが有利かは受け取り始めてからの年数によって変わる、ということです。
他の等級とは、どこで分かれるのか
8級の障害は、程度によって上下の等級に振り分けられるものが多くあります。条文を並べると分かりやすいので、代表的なものを挙げます。
背骨の障害
変形
・11級5号「せき柱に変形を残すもの」
・8級(準用)「せき柱に中程度の変形を残すもの」
・6級4号「せき柱に著しい変形を残すもの」
運動障害
・8級2号「せき柱に運動障害を残すもの」
・6級4号「せき柱に著しい運動障害を残すもの」
変形と運動障害は、別々に段階が定められています。変形なら11級・8級・6級の3段階、運動障害なら8級・6級の2段階です。8級2号の目安は、頸部または胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたものとされています。
圧迫骨折では、変形と動きの両方を評価してもらう必要があります。どちらか一方しか診断書に書かれていないと、本来あたるはずの等級が検討されないまま終わります。
「中程度の変形」にあたるのは、次のいずれかです。 いずれも前提として、エックス線写真・CT・MRIで圧迫骨折等を確認できることが必要です(平成16年6月4日付け基発第0604003号)。
・背骨が前に曲がっている場合……つぶれた椎体の前側の高さの減り方が、後側の高さ1個分の50%以上に達しているもの
・背骨が横に曲がっている場合……コブ法による側彎度が50度以上のもの
・首の付け根が変形して固定された場合……環椎または軸椎の変形・固定により、60度以上の回旋位、50度以上の屈曲位もしくは60度以上の伸展位、または矯正位で30度以上の斜位になっているもの
3つ目は見落とされやすいところです。通達には、この状態になると8級2号の運動障害にも該当するケースがほとんどであると注記されています。確認には最大矯正位のエックス線写真が最も適しているとも書かれていますので、撮られているかどうかを見ておく価値があります。
関節の障害
・12級6号・7号「一関節の機能に障害を残すもの」
・10級9号・10号「一関節の機能に著しい障害を残すもの」
・8級6号・7号「一関節の用を廃したもの」
・6級5号・6号「二関節の用を廃したもの」
関節がどれだけ動くかによって4段階に分かれます。8級にあたるのは、その関節が事実上使えなくなった状態です。可動域の測定値がそのまま結論につながります。
→ 労災事故で肘が動かない/労災事故で膝が動かない/労災事故で肩が動かない
偽関節
・8級8号・9号「偽関節を残すもの」
・7級9号・10号「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」
偽関節とは、折れた骨がくっつかないまま関節のように動いてしまう状態です。これだけであれば8級、加えて著しい運動障害があれば7級になります。
→ 腕を骨折する労災事故に遭われた方へ/足を骨折する労災事故に遭われた方へ
指の障害
・8級3号「母指を含み二の手指又は母指以外の三の手指を失つた」
・8級4号「母指を含み三の手指又は母指以外の四の手指の用を廃した」
失った本数、動かなくなった本数によって、6級から14級まで細かく分かれます。何本が、どの状態なのかを正確に記録してもらってください。
→ 指を切断する労災事故に遭われた方へ/労災事故で指が動かない
会社への損害賠償まで含めて考える
労災保険には慰謝料がありません。将来の収入が減る分も、一時金だけでは埋まりません。事故の背景に会社側の落ち度があったのなら、この2つは会社へ請求していくことになります。
後遺障害慰謝料は、裁判で用いられる基準で8級は830万円が目安とされています。
逸失利益は、事故前の収入に、労働能力をどれだけ失ったかの割合と、その状態が続く期間に応じた係数を掛けて求めます。8級の労働能力喪失率は45%です。関節や背骨、指の障害は時間が経てば戻るというものではありませんから、働ける年齢の終わりまで影響が続く前提で計算します。40歳・年収400万円の方が67歳まで27年として計算すると、逸失利益はおよそ3,299万円になります。
慰謝料と合わせると、賠償の総額はおよそ4,129万円です。ここから、すでに受け取った障害補償一時金503万円が差し引かれます。同じ損害を二重に受け取ることはできないためです。一方、障害特別支給金は差し引かれません。損害を埋めるための給付ではないからです。
そうすると、会社から受け取るのはおよそ3,626万円。労災保険の568万円と合わせて、手元にはおよそ4,194万円が残る計算になります。労災保険の手続だけで終わっていれば568万円でした。
なお、ここでお示ししたのは一定の条件を置いた計算にすぎません。実際の金額は、年齢や収入、会社の落ち度がどの程度認められるかによって上下します。
まとめ
労災の後遺障害8級について、要点を整理します。
8級は、一時金として受け取れる金額が最も大きい等級です。給付基礎日額の503日分に障害特別支給金65万円が加わり、給付基礎日額が1万円であればおよそ568万円になります。7級以上は年金になるため、受け取り方そのものが変わる境目でもあります。
そして8級の障害は、背骨も関節も指も、程度によって上下の等級に分かれるものばかりです。可動域の測定値、失った本数、画像所見。そうした記録がそのまま等級を決めます。
会社に落ち度があれば、労災保険とは別に損害賠償を請求できます。8級の労働能力喪失率は45%と高く、賠償の額は数千万円規模になることがあります。
認定された等級が症状の実態に合っているか、一度確認してみてください。福井で労災事故にお悩みの方は、ご相談をお受けしています。ご相談の予約は、電話でもメールでもLINEでも可能です。初回無料ですので、お気軽にお問い合わせください。






