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労災の後遺障害12級はいくらもらえる?14級との差と会社への損害賠償【弁護士が解説】

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労災事故のケガが治りきらず、「後遺障害12級」と認定された方から、こんなご相談をよくいただきます。

「労基署から12級と言われたけれど、この金額で本当に合っているのだろうか」

労災保険から支払われる金額は、等級ごとに法律で決まっています。ですから、12級と認定されれば、支給される額は自動的に計算されます。ところが、そこで話が終わると思っている方がとても多いのです。

私は福井で15年以上、労働災害の事件を扱ってきました。その経験から申し上げると、12級の方が最終的に手にする金額は、労災保険からの給付だけで終わるか、会社への損害賠償まで進むかで、まったく違うものになります。さらに言えば、認定された等級認定そのものが動くこともあります。実際、当事務所では14級とされた認定を審査請求で12級に変えた案件等を複数扱ってきました。

この記事では、労災の後遺障害12級について、どのような状態が該当するのか、労災保険からいくら支払われるのか、そして会社への損害賠償でどれだけ変わるのかを、順番に説明していきます。14級との違いにも触れますので、ご自身の認定に納得できていない方にも読んでいただきたい内容です。

労災の後遺障害12級とは、どのような状態か

後遺障害の等級は、労働者災害補償保険法施行規則の別表第一「障害等級表」で定められています。12級には、次の障害が挙げられています。

・一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの(1号)
・一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの(2号)
・七歯以上に対し歯科補てつを加えたもの(3号)
・一耳の耳かくの大部分を欠損したもの(4号)
・鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの(5号)
・一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの(6号)
・一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの(7号)
・長管骨に変形を残すもの(8号)
・一手の小指を失つたもの(8号の2)
・一手の示指、中指又は環指の用を廃したもの(9号)
・一足の第二の足指を失つたものなど(10号)
・一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの(11号)
・局部にがん固な神経症状を残すもの(12号)
・外貌に醜状を残すもの(14号)

このうち、労災の現場で圧倒的に多いのが12級12号「局部にがん固な神経症状を残すもの」です。骨折した部分の痛みやしびれが治療を終えても消えない、というケースがこれにあたります。

ここで一点、注意していただきたいことがあります。交通事故に関する記事を読んだ方が「12級13号」という言葉を目にすることがありますが、それは自賠責保険のものです。労災の神経症状は12級12号で、条文が違います。労災の障害等級表では12級13号は「削除」となっていますので、混同しないようにしてください。

12級で労災保険から支払われる金額

12級は一時金として、まとめて支払われる等級です。支払われるものは、次の3つです。

障害補償一時金は、給付基礎日額の156日分です。給付基礎日額とは、事故が起きた日の前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った金額です。労働基準法が定める平均賃金にあたります。

障害特別支給金は、20万円です。こちらは賃金の額に関係なく、等級だけで決まる定額です。

障害特別一時金は、算定基礎日額の156日分です。日数は障害補償一時金と同じ156日分ですが、基礎になる日額が違います。算定基礎日額は、事故前1年間に受け取ったボーナスなどの特別給与の総額を365で割った金額です。毎月の賃金から計算する給付基礎日額とは、そもそも元になるお金が違います。ここを同じものだと思って「156日分の2倍がもらえる」と考えてしまう方がいますが、そうではありません。なお、この計算のもとになる特別給与の額には上限があります。給付基礎年額の20%にあたる額と150万円のうち、低いほうが上限です。

仮に給付基礎日額が1万円だった場合、障害補償一時金は156万円、これに障害特別支給金20万円が加わります。ボーナスがある方は、さらに障害特別一時金が上乗せされます。

労災保険では埋まらないものがある

ここからが、この記事でもっともお伝えしたい部分です。

労災保険の給付は手厚い制度ですが、すべての損害を補ってくれるわけではありません。労災保険には、慰謝料という項目が一切ありません。ケガをして痛い思いをしたこと、後遺障害が残って生活が不自由になったこと、それに対する精神的な苦痛への補償は、労災保険からは1円も出ないのです。

もう一つが逸失利益です。後遺障害が残ると、以前と同じようには働けなくなり、将来受け取るはずだった収入が減ります。この減った分を逸失利益といいます。労災保険の障害補償一時金にはこれを補う意味合いも含まれていますが、実際に減る収入の全額をカバーする水準ではありません。

では、この差額は誰も負担しないのかというと、そうではありません。事故について会社に責任がある場合には、労災保険とは別に、会社へ損害賠償を請求できます。機械の安全装置が外れたままだった、危険な作業を1人でさせていた、同僚の不注意が原因だったといった事情があれば、会社は安全配慮義務違反や使用者責任を問われます。

当事務所が扱った案件でも、労災保険の給付とは別に、会社から1000万円を超える支払いを受けて解決したケースがあります。労災保険の手続だけで終わらせていたら、この金額は受け取れていません。

12級と14級では、受け取る金額がここまで違う

労災の神経症状には、12級12号のほかに14級9号があります。条文を並べてみると、違いは驚くほどわずかです。

・12級12号「局部にがん固な神経症状を残すもの」
・14級9号「局部に神経症状を残すもの」

条文上の差は「がん固な」という3文字だけです。ところが、この3文字で受け取る金額は大きく変わります。

14級12級
障害補償一時金56日分156日分
障害特別支給金8万円20万円
給付基礎日額が1万円なら64万円176万円

労災保険だけで112万円の差が生まれます。そして会社への損害賠償まで含めると、差はこの程度では収まりません。

会社に対する損害賠償では、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求します。このうち後遺障害慰謝料は、裁判で用いられる基準で12級が290万円、14級が110万円です。ここだけで180万円の開きがあります。

逸失利益はさらに差が出ます。逸失利益は「基礎収入×労働能力喪失率×働けなくなる期間に応じた係数」で計算するのですが、この労働能力喪失率が、実務では通常、12級は14%、14級は5%とされているためです。率だけで約2.8倍の違いです。

ここで、期間の扱いに注意が必要です。原則は症状固定のときの年齢から67歳までですが、痛みやしびれのような神経症状の場合は、症状が次第に和らいでいくと考えられるため、期間を短く見る扱いが実務に定着しています。おおむね12級で10年、14級で5年とされることが多いところです。年収400万円の方を例に、この期間で計算してみます。12級であれば逸失利益はおよそ478万円、14級ではおよそ92万円となり、その差は約386万円です。

ここで一つ、押さえておくべき仕組みがあります。労災保険から受け取った障害補償一時金は、会社への損害賠償から差し引かれます。同じ損害を二重に受け取ることはできないためです。ですから、労災保険の額と賠償の額を単純に足すことはできません。

ただし、障害特別支給金は差し引かれません。こちらは損害を埋めるための給付ではなく、社会復帰を支援するための給付だからです。労災保険から受け取ったもののうち、この部分はそのまま手元に残ります。

これを踏まえて、先ほどの例で最終的に手元に残る金額を計算してみます。12級の方は、労災保険から176万円を受け取り、会社からは慰謝料と逸失利益の合計768万円から障害補償一時金156万円を差し引いた612万円を受け取ります。合わせて788万円です。同じ条件で14級であれば、合計210万円にとどまります。

その差は約580万円です。年収がもっと高い方であれば、差はさらに大きくなります。

なお、この金額はあくまで一例です。基礎収入や年齢、症状の内容によって結果は変わりますので、ご自身のケースがいくらになるかは個別に計算する必要があります。

認定に納得できないときは、審査請求という方法がある

「痛みもしびれも消えていないのに14級だと言われた」「症状の重さが認定に反映されていない気がする」

そう感じている方に知っていただきたいのが、審査請求という手続です。労働基準監督署の決定に不服がある場合、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求を行うことができます。

当事務所では、実際にこの手続で14級9号の認定を12級12号に変えた案件を扱っています。工場内でフォークリフトに足を轢かれ、中足骨を骨折した50代の男性の事案です。治療を終えても足に痛みとしびれが残っていましたが、認定は14級9号でした。

そこで個人情報保護法にもとづく開示請求を行い、労働局が持っている認定関係の資料一式を取り寄せました。画像所見と治療の経過を照らし合わせ、症状が「がん固な」ものにあたることを意見書で主張したところ、12級12号に変更されています。その後、会社に対する損害賠償請求で約1200万円を受け取って解決しました。等級が14級のままであれば、解決金は数百万円単位で下がっていたはずです。

ただし、審査請求には期限があります。決定があったことを知った日の翌日から3か月以内です。この期間を過ぎると、原則としてやり直しはできません。認定内容に疑問があるなら、早めに動く必要があります。

まとめ

労災の後遺障害12級について、要点を整理します。

労災保険からは、障害補償一時金として給付基礎日額の156日分、障害特別支給金として20万円が支払われます。ボーナスがある方には障害特別一時金も加わります。

しかし、労災保険には慰謝料がありません。逸失利益も十分には補われません。事故について会社に責任があるなら、労災保険とは別に損害賠償を請求できます。ここまで進むかどうかで、最終的に手にする金額は大きく変わります。

そして、認定された等級そのものが動くこともあります。12級と14級を分けるのは条文上「がん固な」の3文字ですが、金額にすれば500万円を超える違いになることもあります。認定に納得できないまま受け入れてしまう前に、一度確認してみてください。

労災の補償や手続は複雑で、ご自身だけで判断するのは簡単ではありません。会社と直接やり取りすることに負担を感じる方も多いはずです。弁護士にご依頼いただければ、会社との交渉の窓口になりますし、等級認定が妥当かどうかも検討できます。

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